モーツァルトのピアノ協奏曲・最高傑作は?(その2)
Q. モーツァルトのピアノ協奏曲の最高傑作はどれか?
とりわけ20番以降の作品はどれもが素晴らしい。
う〜ん…
A. 卑怯な手だがこう答えたい。すべてが最高傑作。
その中で、私がとりわけ好きなのは先日挙げた20番と、22番だ。
22番の素晴らしさは、「もっともモーツァルトらしい」ということに尽きると思う。
神童。
天才。
神に愛された人間。
人がモーツァルトに抱くイメージは様々だと思うが、私は映画『アマデウス』の中のモーツァルトをイメージする。
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人懐っこく明るい。
頭のネジが一本飛んだような破天荒な性格。
下ネタ好き。非常識。
でも音楽の才能は疑いようはない。
先輩の宮廷作曲家サリエリが嫉妬するほどの才能。
作曲のスピードが凄まじく早く、作曲したあとに訂正することもない。
第二楽章を譜面に残しながら頭の中ではすでに第三楽章を作曲している。
そんなイメージだ。
3歳で鍵盤楽器を初めて弾き、わずか5歳で初めて作曲をし、12歳で最初のオペラを作曲し、27歳のときにわずか3日間で交響曲第36番『リンツ』を作曲・初演。
35年の短い生涯の間に、オペラ、交響曲、室内楽曲、ソナタ、セレナード、宗教楽曲、歌曲など、あらゆるジャンルで膨大な傑作を残した天才。
ピアノ協奏曲第22番は、そんな天才が29歳のときの作品だ。
第一楽章。クルクルとめまぐるしく変わる表情に天才の気まぐれを見る。
明るい曲想に油断していると陰影に富んだ物悲しい旋律が顔を出す。
第二楽章は本音。悲しい曲。
第三楽章は、ステップを踏むような軽快なテンポの明るい曲なのに、なぜか胸が締め付けられるような悲しさがある。悲しみを湛えながらも前に進んでいくかのような曲が激しく心を打つ。
- アーティスト: イギリス室内管弦楽団,モーツァルト,バレンボイム(ダニエル)
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このCDについては以前、バレンボイムについて書いたときに挙げた。しかしこれ以上のものを私はまだ見つけられない。この演奏でバレンボイムはテンポを自由に変えてこの曲の表情をいっそう彫りの深いものにしている。しかも奇を衒って無理にそうしているわけでなく、余裕を持って臨んでいるために、どこまでいっても軽妙である。イマジネーションとファンタジーの溢れる演奏だ。モーツァルト自身が弾いているとしか思えない天才の仕業で、何度聴いても素晴らしい。
きっとモーツァルトもこんな風に自由に弾いていたんだろうな〜。
◇ ◇ ◇
モーツァルトの生涯は残された膨大な作品そのものだ。
音楽を創るためだけに生まれた、一生を音楽だけに捧げた天才。
そんなふうに思い巡らしてしまうバレンボイムの演奏だ。