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眠れない夜にはJ.S.バッハの『ゴルトベルク変奏曲』を

ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685年3月21日-1750年7月28日)は、音楽家一族の中に生まれたが、その一族の中でも格別の才能を持った、西洋音楽史に大きな足跡を残した作曲家だ。


バッハの魅力。

バッハは深遠。

「バッハ的」とも表現できそうな世界の深さ。

旋律の親しみやすさ。

あたたかさ。

厳しさ。

豊かさ。

祈り。

そして、どこから手をつけてよいかわからないとっつきの悪さが同居している。


無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』、

平均律クラヴィーア曲集』、

このタイトルだけで逃げ出す人もいるかもしれない。


バッハは、宗教曲、歌曲、協奏曲、鍵盤楽曲、その他の器楽曲、その他の実験的な諸作品など様々なジャンルに傑作を残した。書かなかったのはオペラぐらいだ。

死後すぐに忘れられてその後、発見・再評価されたという何とも怪しげでミステリアスな歴史も、バッハに対する興味をかきたてられるところでもある。


その巨大さゆえに、正直なところ、私はバッハの作品でも知らないものは多いし、手を出しかねているジャンルもある。


バッハの世界は広く、そして深い。


◇  ◇  ◇


そして『ゴルトベルク変奏曲』。

バッハの作品の中でも特に親しみの持てる作品のひとつだ。


この曲は、アリアと変奏から成る、鍵盤楽器のための器楽曲だ。


変奏曲というのは、ある旋律に様々な装飾をつけて演奏されるものだ。

第一変奏、第二変奏…、というように、様々なバリエーションが続いていく。


繰り返す。

まわる。

戻ってくる。

円運動。

無限であるかのような音の連鎖。

宇宙のようだ。


この曲は、不眠症に悩むある貴族のために書かれたという逸話が残されている。

したがってこの曲は全体を通してとてもやさしい。

とても落ち着いた気分になることができる。

もともとが眠りをもたらすという目的を持っているために、子守唄のような静かな調べが姿を見せる。

安心して眠りにつくことができる。


バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年デジタル録音)

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年デジタル録音)


もともとチェンバロで弾かれていたこの曲が、今日、これだけピアノで弾かれるようになったのはグレン・グールドのおかげだ。やや淡白なチェンバロの響きと比べるとピアノは雄弁だ。進化した楽器の方が当然、表情も豊かだ。しかもこの演奏はとても豪放だ。細部の彫りはより深く、大胆な表情がつけられていて、これはバッハというよりもグールドの音楽だ。このCDを意識して、様々な演奏家が録音を残している。その出発点となった演奏だ。


◇  ◇  ◇


私は眠れない夜、バッハのゴルトベルク変奏曲を聴きたくなる。

この曲はいわば子守唄だ。

しかしグレン・グールドの演奏はとんでもなくエキセントリックだ。

そして余計に眠れなくなくなる。

「眠れないときに聴く」ということと「聴いて眠れる」ということは別の話のようだ。


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