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森羅万象のブルックナー交響曲第7番


以前にこのブログで、ブルックナーのイメージについて、「神」とか、「森羅万象」と書いたことがあった。


クラシック音楽の名盤ガイドブックなどでも、表現は違うが同じような主旨のことが書かれていた。

ブルックナーを聴いている人はずるい、と思っていた時期がある。ベートーヴェンにもモーツァルトにもない世界がブルックナーにあるのはいいが、同じ感動でもブルックナーのそれは、聴き手が心の中に王国をつくってしまう喜びがあると知ったからである。ブルックナーを聴いていると気持ちが穏やかになり、雄大なる自然との一体感に包まれるが、それはやがて不思議な高揚感とも征服感とでも言うべき満足感へと変わり、いつしか心の中に王国を持ったかのような気分になってしまうからである(音楽之友社『クラシックがわかる超名盤100』諸石幸生・著より)。


確かにそうだ。

「心の中に王国」。

うまい。


しかし、ブルックナーを知らない方や、好きではない方にとって、わかっていただけるだろうか。

ブルックナー交響曲は長いし、音楽が休止したかと思うとまったく違う主題が出てきたり、何を言いたいのかよくわからない…。

コンサートでも長いために1曲だけのプログラムが多く、なんか損をした気分だ!?


◇  ◇  ◇


ブルックナーの音楽を言葉で表現しようとすると、どうしても曖昧になってしまう。

マーラーは魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界だがブルックナーは漠然としている。


私がブルックナーばかりを聴いていたときの気持ちを言葉で表現するとこうだ。


ブルックナーを聴いているときは、ブルックナーだけでよい、と思える。

誰にもわからない、自分の世界ができてしまう。

心の中に小人が生まれてせっせと家を建ててしまう。

そしてその家はとても居心地がよいのだ。


大げさに言うと、世界は「ブルックナー」と「ブルックナー以外」だ。


ブルックナーの音楽は心で聴く音楽だ。

…よけいにわかりにくくなったような気が。


◇  ◇  ◇


オルガン奏者でもあったブルックナーが活躍した音楽ジャンルは何よりも交響曲だ。

ブルックナーは全部で9曲の交響曲を書いた(9番は未完)。

どれも素晴らしいが、以前にも書いたように私は第7番を気に入っている。


ブルックナー:交響曲第7番

ブルックナー:交響曲第7番


交響曲第7番は、前半に比べ後半が軽い、という批判もされている曲だが、ギュンター・ヴァント指揮のこの演奏を聴くとそんなことはない。後半が聴きどころであるといっても言い過ぎではない。その精密な演奏は「スイス製の時計」。いや、高精度で正確な時間を刻む日本製の日本人好みの電波時計だ。


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