最も「美しい」ピアノ協奏曲は?フレデリック・ショパン
もっとも「美しい」ピアノ協奏曲は何だろう?
傑作であるかどうかは別にして、「美しさ」で選ぶとどうなるのか?
シューマンだろうか?
グリーグかもしれない。
美しいピアノ協奏曲は沢山あるがどれが一番?
私ならショパンの2曲のピアノ協奏曲を挙げる。
ショパンは2つのピアノ協奏曲を書いたがどちらも美しさでは甲乙つけがたい。
ピアノとオーケストラの対話のような場面は少ないので、オーケストラとしての魅力は薄い曲かもしれないが、ピアノの美しさは格別で、ショパンの詩的な旋律が際立っている。
◇ ◇ ◇
ショパンが19〜20歳のとき、ピアノ協奏曲第1番と2番は作曲された(2番の方が先に書かれた)。
この2つの曲はとてもよく似ているので、私は兄弟だと思う。
1番の方が2番よりもポピュラーだが、私は1番よりもやや荒削りな2番の方を好んでいる。
激しく切ない、哀愁を帯びたメロディに心を動かされる。
ショパンの青春時代の激しい感情を象徴するようなメロディ。
二十歳の頃はそうだ。
こういう収まりのきかない感情。
少し前のことだが、自分にもあったよな〜と思う。
若き日のショパンの激情をたたえた傑作だと思う。
これら2曲のピアノ協奏曲は、ショパンのワルシャワ時代の作品で、これらを作曲したあと、ショパンはウィーンへと向かう。そしてその後、パリに移り住み、ジョルジュ・サンドとの出会いもあったりするのだが、二度とピアノ協奏曲というジャンルの作品を残すことはなかった。
故郷と青春時代に別れを告げる、いわば惜別の曲だ。
◇ ◇ ◇
CDはポーランドのピアニスト、クリスティアン・ツィマーマンの2枚を挙げたい。ツィマーマンはこの曲を2回録音している。
旧盤
新盤
- アーティスト: ツィマーマン(クリスティアン),ショパン,ポーランド祝祭管弦楽団
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 2000/01/13
- メディア: CD
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旧盤は若さ溢れるショパン。当時のツィマーマンは、1973年の第9回ショパンコンクールに史上最年少の18歳で優勝するという実績を引っさげて登場した天才ピアニスト。ジュリーニの安定した指揮に、若さに似合わぬ落ち着きと端正な演奏でこたえる。
新盤はそれと比べるとずっと表情が濃い。この演奏でツィマーマンは弾き振りに挑戦している。弾き振りどころか、ショパンのピアノ協奏曲を演奏するだけのために新しいオーケストラを結成し、団員のオーディションまで自らがこなした一大プロジェクト。その成果はオーケストラ伴奏にあらわれている。単調になりがちな伴奏に修整を施して、ずっと聴き応えのするオーケストラに仕立て上げた。このCDを聴いてしまうと他のものがあっさりしすぎて聴けなくなってしまうという、怖いCDだ。
旧盤は「青春真っ只中」という演奏だ。
対して新盤は「振り返る青春」、そんな印象だ。
今日は、音楽家ツィマーマンの充実した歩みにショパンの生涯を重ね合わせたい。