ショパン・ピアノ協奏曲第1番(ピアノ六重奏版)
ショパンのピアノ協奏曲第1番にはとても興味深いCDがある。
それが、フランス人ピアニスト、ジャン・マルク・ルイサダのCDだ。
協奏曲がピアノ六重奏版にアレンジされ、ルイサダのピアノに、弦楽クインテット(五重奏団)の伴奏がつく。
ショパン:ピアノ協奏曲第1番&ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲
- アーティスト: ルイサダ(ジャン=マルク),ドヴォルザーク,ショパン,ターリヒ四重奏団,ベルリオーズ(ベンジャミン)
- 出版社/メーカー: BMGメディアジャパン
- 発売日: 1999/02/03
- メディア: CD
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ジャン・マルク・ルイサダは、1958年生まれのフランス人のピアニストで、1985年の第11回ショパンコンクールで第5位の成績を収めた(このときの1位はスタニスラフ・ブーニン、5位には日本人ピアニストの小山美稚恵が入った)。
ショパンをはじめ、モーツァルトなどの古典から、シューマンなどのロマン派、ドビュッシーやラヴェルなど近代フランス音楽へレパートリーを広げつつ、このCDのような意欲的な試みも続けている。
私が好きなピアニストのうちの一人だ。
このCDでは、オーケストラ曲が見事に室内楽曲となっている。
もちろん、ピアノのパートはほとんど同じなので、ピアノの美しさは存分に堪能できる。
ルイサダのピアノは詩情たっぷりで、まさにショパンが弾いているようだ。
テクニックの表現は控えめな感じだが、リズム感がよくて、軽やかさが伝わってくる。とくに第三楽章でそれを感じる。
音の輪郭がボヤ〜っとした感じなのだが、眠さはなく、むしろ格調の高さを感じる。
◇ ◇ ◇
ショパンのピアノ協奏曲は、オーケストラの伴奏がつまらないといわれてきた。
ピアノのための曲だから仕方がない気もするが、とりわけこういった声は演奏する側にあったと思うので、ルイサダのアプローチはとても面白い。
自分の演奏がそのパートを代表するものであったら、演奏する甲斐も一層あるというものだろう。
パリ時代のショパンは、こうしたサロン形式のコンサートをよく披露していたらしい。
協奏曲をするとなると大掛かりな人数が必要だが、この規模なら簡単だし、演奏する場所も選ばない。
ショパンに限らず、19世紀のパリでは、サロンコンサートが流行していたようだ。
ツィマーマンはオーケストラを大掛かりにいじることでこの曲の魅力を引き出したが、ルイサダはまた違ったアプローチでこの曲の魅力を引き出した。
19世紀の時代の息吹を感じるルイサダのCDだ。