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国立国際美術館「小川信治展−干渉する世界−」


三連休なので遊びに行ってきた。


こういう日はどこに行っても混んでいるが、空いている場所がある。


現代美術の展覧会だ。


実は、別の日に京都国立近代美術館に、評判の「プライスコレクション伊藤若冲と江戸絵画」展にも行ってきたのだが(こちらは非常に混んでいた)、これは素晴らしかったのでもう一度見に行く予定なので別の機会に書くとして、


大阪の国立国際美術館に行ってきた。


空いていた。


「エッセンシャル・ペインティング 1990年代以降のヨーロッパとアメリカの絵画」と「小川信治展−干渉する世界−」、2つの特別展が開かれている。


◇  ◇  ◇


「エッセンシャル・ペインティング 1990年代以降のヨーロッパとアメリカの絵画」


どうしてこんなに空いているんだろう。

現代美術というのは客が入らないものなのだろうか。


展示されている画家は、「ベルナール・フリズ」、「アレックス・カッツ」、「ミッシェル・マジュリュス」、「ローラ・オーエンズ」、「リュック・タイマンズ」、「マルレーネ・デュマス」、「エリザベス・ペイトン」、「ジョン・カリン」、「ネオ・ラオホ」、「ピーター・ドイグ」、「マンマ・アンダーソン」、「セシリー・ブラウン」、「ヴィルヘルム・サスナル」の13人。


1990年代以降の美術なので、文字通り「現代美術」だ。


コンテンポラリーアートを代表する有名画家なのだろうが、私の中では、現代美術の知識はアンディ・ウォーホルで終わっているので、名前を挙げられてもお手上げだ。


しかし知識はなくても不思議と楽しんで絵を見ることができた。

難しいことを考えずに、「この画家は何を表現しようとしてこんな絵を描いたのか」、「どうしてこのタイトルをつけたのか」、「対象にどんな意味を持たせているのか」、そんなことを考えながら歩く。


3秒で後にする絵もあれば、じっくり隅々まで見てしまう絵もある。

解釈不可能なものもあるが、ハッとする絵も発見。

私は1972年ポーランド生まれの画家、「ヴィルヘルム・サスナル」の絵を最も気に入った。


◇  ◇  ◇


「小川信治展−干渉する世界−」


これは文句なしにおもしろい。


小川信治氏の作品は、現代美術の本で見たことがある。


例えば、フェルメールの『牛乳を注ぐ女』の女がいない絵。

ベラスケスの『ラス・メニーナス』の王女がいない絵。

ピサの斜塔が2本ある絵。

レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』で、ユダがいない絵。

『最後の晩餐』でキリストしかいない絵。

『最後の晩餐』でキリストだけがいない絵。

そんな絵の数々。


『モアレの風景』は連作で、「モン・サン・ミッシェルの絵」のようだが細部がどうも違う。連作でそんな絵が何枚もある。全部を見て、この世界遺産のイメージが頭の中に統合される。

これは面白い体験だ。


写真と見違えるほどの精緻な描写に、細部に違和感をもたらされる対象。

「実在」する絵の中の「違和感」が、「意識」のなかの「記憶」と結びついて、確かな「イメージ」をつくる。そんなアート。


うまく言葉に表現できないが、『モアレの風景』はすごい。


◇  ◇  ◇


現代美術については、入門的な本がいくつも出ているが、私が読んだのは以下の二つだ。


ニューヨーク美術案内 (光文社新書)

ニューヨーク美術案内 (光文社新書)

美術館で愛を語る (PHP新書)

美術館で愛を語る (PHP新書)

前者は画家の立場として、後者は鑑賞する立場として、現代美術を楽しむコツを書いている。


確かに現代美術は難解なところもあるが、この展覧会を見ても、画家が私と同世代であることも多い。


だから新作の映画や新しい音楽に触れるように、またクラシック音楽などの伝統的な音楽でいうと新しい指揮者の演奏を聴くのと同じような感覚、いわば普段着の感覚で、接することが、現代美術を楽しむポイントなのではないかと思った。


現代アートを堪能した一日だった。


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