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ベートーヴェン・交響曲第5番「運命」


ベートーヴェン交響曲の中で最高傑作は何番かと訊かれたら、私は5番と答える。


もちろん3番「英雄」も素晴らしいが、全体を通しての緊張感では5番に及ばない。

他がどうというよりも、5番が傑出しているのだ。


これほど緊密で、ドラマチックで、緊張感に満ちた内容、しかも構成も寸分の隙もなく、音楽的にも完成され、聴いた後に相当な充足感を得られる作品は他にはない。


エネルギーの塊のような曲だ。


マーラー交響曲が最近ではよく演奏されて、ベートーヴェンの5番の演奏の機会は比較的少なくなったように思えるが、それでも来日オーケストラのプログラムでは相変わらず中核をなしていることが多い。


また「暗から明へ」という構成に無理がなく(無理がないというよりも必然的で)、オーケストラの迫力もあって演奏効果も高く、よほどバラバラな演奏でなければ、最後は「絶対に」深い感動が得られる。


それが自分の好きなタイプの演奏だったりすると、感動の程は言葉では言い表せない。


私はノリントン指揮のシュトゥットガルト放送響の5番を聴いて、あまりの素晴らしさに第4楽章の途中から、心拍数は上がり呼吸は早まり、膝ががくがくして、演奏直後は放心。しばらく拍手が出来なかった。そんな経験がある。


◇  ◇  ◇


ところで「運命」というよく知られた標題は、冒頭の4つの音についてベートーヴェン自身が「このように運命が戸を叩くのだ」と述べたというエピソードが伝わっているが、真実かどうか定かではない。

この「運命」という標題が一般的なのは日本だけで、輸入盤のジャケットを見ると5番という番号だけで標題はほとんど付いていない。


しかし、どうしてベートーヴェンの5番は、感動的なのか。


ベートーヴェンの5番は、気持ちがいいとか、心に訴えてくるとか、共感できるというレベルではなくて、


大げさに言えば、生き方が問われるというか、精神が問われるというか、ベートーヴェン自身が私を全力で叱咤激励してくれているように感じる。


命がけで叱り飛ばされ、命がけで励まされるから、深い感銘が得られるのではないだろうか。

(しかしそういう音楽を聴きたくないときも当然あるので、そんなときは同じベートーヴェンでも、6番とか8番とかを聴く。)


◇  ◇  ◇


CDは愛聴しているものが何枚かある。


ベートーヴェン:交響曲全集 vol.3

ベートーヴェン:交響曲全集 vol.3

実演で感動したノリントンは外せない。ビブラートをかけない弦の奏法なので軽い音なのだが、第1楽章の終わりくらいから気にならなくなる。この演奏のみの特徴だが、第1楽章の終わりはクレッシェンドしながら終わるのだが、これに慣れると他の演奏があっさりしすぎているように感じてしまう。


ベートーヴェン:交響曲第5&7番

ベートーヴェン:交響曲第5&7番

これは不朽の名盤といえる一枚。クライバーの指揮だとオーケストラはどうしてこんなに燃え上がるのだろう。「燃焼」という言葉がぴったりのフィナーレ。


ベートーヴェン:交響曲全集II?第4番・第5番「運命」・第6番「田園」

ベートーヴェン:交響曲全集II?第4番・第5番「運命」・第6番「田園」

CDでは私が一番好きなのはヴァント盤だ。構成の必然性が最も真に迫った一枚といえる。音はクライバー盤と比べると対極にあるというか、地味でくすんだような音に格調高さが感じられる。


ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

新しい時代の名盤になる可能性を秘めた一枚。同じウィーン・フィルでもクライバーとこんなにも違うことに驚く。この名人オーケストラを「燃焼」させるのではなくて、細部までコントロールし尽くしている。テンポ設定も抜群。指揮者のセンスとマネージメント能力に素晴らしいものがある。


ベートーヴェン : 交響曲第5番ハ短調<運命>

ベートーヴェン : 交響曲第5番ハ短調<運命>

ベートーヴェン:交響曲第1番&第5番

ベートーヴェン:交響曲第1番&第5番

フルトヴェングラーはもはや伝説。どうこう言えるレベルではない。音が相当悪いのでそれを補えるような再生をすれば(ステレオの設定を変えるなどして)、とんでもない熱演であることがわかる。


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