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マーラー交響曲第5番・葬送行進曲とアダージェット


ベートーヴェン交響曲第5番。

運命が戸を叩くという、「タタタターン」という冒頭の4つの音。


同じ「5番目の交響曲」で、マーラーは同じようなフレーズを用いる。


しかしベートーヴェンの「運命」のようにエネルギーが凝縮したような感じではなくて、もっと不気味なもの。


何か不幸の始まりを告げるような深刻な音だ。


マーラー交響曲第5番では、トランペットのソロによって、冒頭の4つの音が演奏される。


第一楽章は葬送行進曲。

トランペットのソロは、マーラーの魑魅魍魎の世界の始まりを告げる凶凶しいファンファーレだ。


第二楽章は、第一楽章の葬送行進曲を受けて、死の恐怖とたたかうかのような激しい音楽が展開される。

第三楽章はスケルツォ。天国へといざなう天使の舞いのようだ。


葬送行進曲という不吉極まりない始まりのこの交響曲は、同時に甘美の極みともいえるアダージェットを持つ。


第四楽章のアダージェットは、ハープと弦楽器だけで演奏される。この部分だけ別格なくらいポピュラーな曲だ。非常に美しく官能的な音楽で、天上の生活を歌うかのよう。


第五楽章のフィナーレは、お祭り騒ぎ。

わかりやすい盛り上がりで曲は幕を閉じるが、これがどうしていままでの深刻な曲とつながっているのか正直言って不明だ。

この解釈不可能なところがアーラーらしいが、わかりやすいフィナーレなのでコンサートでは非常に盛り上がる。ブラボーの嵐となる。


◇  ◇  ◇


CDは、名曲だけあって枚挙に暇がない。


テンシュテット

マーラー:交響曲第5番

マーラー:交響曲第5番

この曲の録音には、古くはバーンスタインの指揮による名盤があるが、テンシュテットバーンスタインと同じようにマーラーへの共感に溢れている。これはマーラーと心中しかねない熱演だ。


■ラトル盤

マーラー:交響曲第5番

マーラー:交響曲第5番

ブーレーズ
マーラー:交響曲第5番

マーラー:交響曲第5番

テンシュテット盤と対照的な2枚だ。違いは一言!客観的。ラトル盤とブーレーズ盤。しかし同じ客観的な演奏でも両者の印象はかなり違う。ラトル盤は実験的でスリリング。ブーレーズ盤はもっと落ち着いていて、まるで横綱相撲のよう。両盤ともに音質はすこぶる良い。


アバド

マーラー:交響曲第5番

マーラー:交響曲第5番

アバド全盛期のものと、病気からの復活を経たライブ(後者はDVD)。演奏は前者の方が才気ほとばしるようで数段優れているように思うが、後者も非常に感動的だ。後者・ルツェルン祝祭管弦楽団との演奏は、慈しみに満ちた感動の第五だ。ちなみにアバドにはシカゴ響との録音もある。


激しさ、美しさ、気味の悪さなど様々な魅力を持った、この曲。

マーラー交響曲の中でも、第1番「巨人」や、第4番と並んで、古くから演奏されてきたのもわかる気がする。


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