ブルックナー体験・交響曲第4番「ロマンティック」
好きな人にはたまらないが、好きでない人にとっては全くどうでもよい作曲家の筆頭がブルックナーだ。
交響曲第8番などは演奏時間で90分程度にもなるので、演奏会では大抵、1曲のみのプログラムとなる。
4番、5番、7番、9番なども1時間を超える。
肝心の曲も、音楽が突然止まったかと思うと突然大音量で新しい主題が出てきたりする。
フィナーレもわかりやすい盛り上がりでなくブワーッと中途半端に大きな音が出て終わったり、どこか思わせぶりな感じを持たせたように終わる曲もある。
ベートーヴェンの交響曲のような、たたかいと勝利などのドラマもないため、わからない人にとってはモゴモゴなにを言っているのかわからない時間が長時間続くことになる(かもしれない)。
これは苦痛だろう。
ただし、ブルックナーを好きな人にとっては、この長さが至福の時間となる。
私もその一人だ。
ブルックナーの交響曲は、私にとって、「聴くことによって、より大きな存在を感じることができる曲」だと言ったら言い過ぎだろうか。
人によってはそれを神と言ったり宇宙と言ったりするのだが、確かに、聴くことによって他では得られない充足感を得ることが出来る。
そんな音楽はあまりない。
◇ ◇ ◇
ブルックナーは確かにわかりづらい。
しかし何度も何度も繰り返し聴いていると突然わかる。
「あ!」
これは気持ちいい。
部分と全体がこう関係していたのか。
最後のブワーッとした終わり方は必然的だった。
細かい部分に神が宿っているかのようなディテールの輝き。
別にスピーカと向き合って聴かなくても、ただ音楽を繰り返しかけているだけでも「その瞬間」は確実に訪れる(はずだ)。
これがブルックナー体験だ。
◇ ◇ ◇
ブルックナーの交響曲では、私は、3番、4番、5番、7番、8番をとくに好んでいるが、どれを聴いても、ブルックナーらしさというのは感じられると思う。
作曲者自身がその出来に自信を持ち、多くの観客に受け入れられたのは4番だ。
「ロマンティック」という標題で呼ばれるこの曲は、標題ほどにはわかりやすくロマンチックでもないが、何度も聴いているうちにブルックナーの世界の広がりを感じることができるはずだ。
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- アーティスト: ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団,ブルックナー,シャイー(リッカルド)
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ブルックナーの交響曲について語るときに外せないのが「稿」「版」の問題だが、ここでは触れない。
第1楽章。朝靄。雲の切れ間から太陽が覗いて大地が照らされる、そんな印象。やがて大らかな自然。
第2楽章。森。『もののけ姫』の森を思い出す。神秘的。それは親しみの持てるものではなく自然の厳かな秩序を持ったもの。
第3楽章。ワーグナー『ニーベルングの指輪』の「ヴァルキューレの騎行」を思わせるような大規模な狩猟の光景。
第4楽章。より大きな存在で世界をまとめる。そんな印象。最後は余韻が残る。
できれば何度でも聴きたい。
繰り返して聴く価値のある2枚だ。
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