モーツァルト・交響曲第25番「小ト短調」
映画『アマデウス』の冒頭、激しい曲調の音楽が流れる中、サリエリが「モーツァ〜ルト!」と叫ぶ場面がある。
この映画の中でサリエリは依頼主を装い(まるで死神のような変装で)、病床に臥すモーツァルトに、モーツァルト自身のためのレクイエムを書くことを依頼し、モーツァルトを死に追い込んだという設定。
同じ音楽家であるサリエリがモーツァルトの傑出した才能を憎んで、モーツァルトの死に追いやったのではないかという説に基づいている。
いまとなっては真偽は不明だが、この説は古くから語られてきた。
そのサリエリが晩年、錯乱し自殺を図り、精神病院へと運び込まれる。
そこで流れていた音楽がモーツァルトの交響曲第25番の第一楽章だ。
◇ ◇ ◇
モーツァルトの41曲の交響曲のなかで、短調の曲は2曲しかない。
それが40番と25番で、ともにト短調であることから、規模の小さい25番は「小ト短調」と呼ばれている。
怒り。悲しみ。
激しい叫び。
号泣と嗚咽のようにも感じる。
モーツァルトの17歳頃の作品。
悲しさを押し殺して明るく振舞うモーツァルトはここにはいない。
モーツァルトは長調で悲しい曲を書けたというから、このト短調の交響曲の悲しさは特別だ。
生の感情を剥き出しにして怒り、悲しむ天才がここにある。
その悲しいメロディもとても美しい。
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モーツァルト:交響曲第25番/第29番/第35番「ハフナー」
- アーティスト: ケルテス(イシュトヴァーン),モーツァルト,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
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名曲の割に「小ト短調」は意外にCDが少ない。
メロディが良すぎて、どんな演奏でもかわりばえがしないからだろうか。
いずれにしても、この2枚のCDで満足だ。
決して新しい録音ではないが、気品があるというか、どちらCDの音質も素晴らしい。
25番のCDにもピリオド奏法による演奏も出ていることは出ているのだが、映画『アマデウス』の影響か、私はウィーンフィルの演奏で聴きたい。
若いモーツァルトの感情の爆発にシンクロするようだ。
ちなみに、サリエリの曲では、数年前にチェチーリア・バルトリが歌ってヒットしたCDが記憶に新しい。
- アーティスト: バルトリ(チェチーリア),サリエリ,フィッシャー(アダム),ジ・エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団
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