メンデルスゾーンの「スコットランド」
メンデルスゾーンのスコットランド訪問中に着想されたものの、その後、年月を経て完成したのが、交響曲第3番イ短調「スコットランド」だ。
名曲中の名曲であり、愁いを帯びた曲調にメンデルスゾーンの天才が見える名曲だ。
初めてこの曲を聴いたとしても涙できる。
そんな曲。
幽愁の美しさだ。
メンデルスゾーンは天才と言われる。
数々の名曲を生み出した作曲家であるだけでなく、マタイ受難曲を復活・演奏することで、歴史に埋もれていたJ.S.バッハを発掘し、また指揮者としても優れた指揮法を確立し、過去の名曲を演奏するという演奏会のスタイルを確立した。
難しいことをいとも簡単にやってみせて、それを全然、苦にしない。
人が10日かかることを1分で出来る。
あるいは普通の人には信じられないものの見方。
生まれついての天才が出現する確率は確かにある。
そういう才能がない人にとっては天才を賞賛するほかないのだが、思うに、メンデルスゾーンとはそんな人だったのだろう。
メンデルスゾーンは、38歳でこの世を去っている。
その短い生涯の中でも、交響曲第3番「スコットランド」は、第4番「イタリア」や劇音楽「真夏の夜の夢」、ヴァイオリン協奏曲と並んで、この作曲家の代表作といえる。
◇ ◇ ◇
CDは、愛聴しているものが2枚ある。
メンデルスゾーン : 交響曲 第3番 イ短調 作品56「スコットランド」
- アーティスト: マーク(ペーター),ヴィヴィアン(ジェニファー),ロウ(マリオン),コヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラ・ハウス女声合唱団,メンデルスゾーン,ロンドン交響楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2000/07/26
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- アーティスト: クレンペラー(オットー),メンデルスゾーン,フィルハーモニア管弦楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2002/06/19
- メディア: CD
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
マークとクレンペラーは全く対照的な方法でこの曲に迫っている。マークは非常に美しい音楽を完璧に響かせ、聴かせる。ゾクゾクするほど美しい。「昨日録音した」といわれても信じてしまうほど録音状態が素晴らしく、40年以上前に録音されたのが信じられない。
クレンペラーは、まるで得意のマーラーを演奏するかのような追い込み方でメンデルスゾーンに迫る。第4楽章に情念のうごめく姿が感じられるような凄まじい演奏。毒すら感じさせる風貌で私に迫ってくる。
対照的なこの2枚が、私の中では双璧だ。