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リヒャルト・シュトラウス、交響詩『英雄の生涯』


デコレーションケーキのような曲だ。

あるいはショーケースに並んだオーケストラ。

あるいはオーケストラの見本市。


指揮者がやりたいようにやって、オーケストラの力量も存分に発揮させる。

こういう曲をコンサートで聴くのは愉しい。


リヒャルト・シュトラウスが、34歳の時に交響詩作曲の総決算として書いた『英雄の生涯』。

最後の交響詩作品だ。


その後、85歳で亡くなるまでに、『サロメ』や『薔薇の騎士』、『ナクソス島のアリアドネ』などの多くのオペラや、アルプス交響曲、「4つの最後の歌」などの傑作を残すが、交響詩は、比較的若い時期に作曲をやめている。


英雄の生涯』は、自らを英雄に見立て、自分の半生を英雄の生涯として、成功、妨害、恋愛、戦い、業績、回想へと、私小説的に音楽が展開する。

交響詩英雄の生涯
1.英雄
2.英雄の敵
3.英雄の伴侶
4.英雄の戦場
5.英雄の業績
6.英雄の引退と完成


英雄の生涯』は連続して演奏される6つの部分から成る。


「英雄」では、輝かしい英雄のテーマが歌われる。このテーマが全体を貫く主題だ。
「英雄の敵」では、木管楽器によって様々な妨害や批判が表現される。
「英雄の伴侶」ではヴァイオリンのソロが英雄の妻を演じる。しっかりとした自己をもっている魅力的な女性というイメージだ。
「英雄の戦場」では、打楽器の凄まじい打撃や激しい金管木管の音響によって英雄の戦いが描かれる。最後はめでたく戦いに勝利する。英雄のテーマが流れる。
「英雄の業績」は、平和時の英雄の業績が語られる。現実のリヒャルト・シュトラウスの作品『ドン・ファン』や『ツァラトゥストラはかく語りき』などからメロディが引用される。劇中劇のようで楽しい。
「英雄の引退と完成」では、余生を表すかのようにしみじみとした音楽となり、人生が充実のままに幕を閉じる。


◇  ◇  ◇


CDは、現代の「英雄的な」指揮者によるものが3枚。


R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

ラトル×ベルリン・フィル盤は、軽快な『英雄の生涯』だ。言い換えると「あっさり」。オーケストラがベルリン・フィルなので軽快というとおかしいかもしれないが、確かに軽快に聴こえるのだ。楽器の対比が強調されることによって、音の輪郭がくっきりしているからだろう。ここでフルートが、ここでオーボエが、など個々の楽器がはっきりと聴こえる。ラトルの天才的な色彩感覚と絶妙のテンポ設定で、重々しくならない。聴いていて楽しい演奏だ。こういう外連味たっぷりの曲をシンプルにまとめあげるセンスと手腕は凄い。


R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

ティーレマン×ウィーン・フィル盤は、重厚な『英雄の生涯』だ。言い換えると「こってり」。伝統回帰。ラトル盤と比べると「ボワ〜ッ」とした印象は否めない。が、雰囲気作りが素晴らしい。「英雄の伴侶」、「英雄の戦場」などではオペラ的な盛り上げ方をする。視覚的だ。最近の若手ではコンクール出身の指揮者が多くなったが、ティーレマンは歌劇場叩き上げの指揮者だ。アシスタントから始まり、地方の歌劇場で研鑽を積みながらキャリアを築き、バイロイト音楽祭にもデビュー。有名オーケストラへの客演。そしてミュンヘン・フィルの首席指揮者のポストを手に入れた。まだ40代と、若い。


R.シュトラウス:英雄の生涯

R.シュトラウス:英雄の生涯

バレンボイム×シカゴ響盤は、「英雄の戦場」が聴きどころだ。上記2つの演奏と比べるとテンポが異様に早い。倍速といっても大げさではない。そしてこの超スピードでも破綻しないシカゴ響の演奏能力は凄まじい。最初は違和感があるが慣れてしまうと他が鈍重に聴こえてしまうという恐ろしい録音だ。


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