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ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調


ラヴェルのピアノ協奏曲は、カンディンスキーの絵に似ている。


カンディンスキー

むずかしい標題を持つ抽象画。

直線、曲線と円。図形。記号。明確な意図をもって描かれているのだろう。

幾何学的模様。

都会的な表情。現代的なセンス。

洒脱。軽快。

色彩豊かな抽象画はどこか音楽的だ。


ラヴェル

縦横無尽に駆け巡るピアノ。

オーケストラは、オーケストレーションの魔術師といわれるラヴェルだけあって、赤や黄色が目に浮かぶように視覚的でカラフルだ。


この曲は、当時アメリカで流行の兆しを見せていたジャズの影響を受けて書かれたと言われており、そういわれてみると確かにジャズっぽいメロディやリズムを感じる。


◇  ◇  ◇


第1楽章は「パーン」という鞭の音から始まる。続いてフルートによって演奏されるユーモラスなメロディ。主張しあうパート。絡み合うパート。溶け合うパート。コロコロ変わる不安定な表情。諧謔的。


第2楽章。第1楽章とは打って変わって情緒的。都会のオアシスのようだ。しかしすぐに不安げな顔を見せる。


第3楽章。トランペットの咆哮。冒頭からいきなり最大音量で迫る。不協和音。コミカル。勢い。再び鞭。様々な表情を見せながら一気に終わる。


音楽を絵画に例えるのには無理が多いが、聴いた後の印象は、カンディンスキーの絵を見たときとよく似ている。


■ツィマーマン&ブーレーズ

ラヴェル:ピアノ協奏曲

ラヴェル:ピアノ協奏曲

ツィマーマンのピアノは機械的。音色は粒がそろっていて非常に美しい。計算されていて踏み外さない。人工的。人工美。ひとつひとつ丁寧に組み立てられる製品のようだ。CDだから工業製品か。ブーレーズの指揮との相性もばっちり。


アルゲリッチアバド

Prokofiev, Ravel: Piano Concertos, etc / Martha Argerich

Prokofiev, Ravel: Piano Concertos, etc / Martha Argerich

ツィマーマンが機械的ならアルゲリッチは人間的だ。地図なしに動物的なカンで目的地に辿り着くという感じだ。このノリで最後までもつのだろうかと思わせるほど、躍動感ではこちらが上だ。ピアニストの閃きと超人的な技巧に、手に汗を握る。指揮のアバドは、アルゲリッチのピアノに合わせている、という印象で、ピアニスト主導のCDだ。


現代美術の展覧会を見に行くと難解な作品ばかりなので、そういうものを見た後ではカンディンスキーの抽象画でさえもかえって古典的と思えるような安心感がある。

ラヴェルもそうだ。現代音楽を聴いた後は、ラヴェルでほっとする。


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