『ハンニバル・ライジング』(トマス・ハリス作 角川文庫)
『ハンニバル・ライジング』を読んだ。
ちなみに映画はまだ見ていないが観たいと思う。
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読んですぐに、Amazonに下記のようなレビューを載せた。点数は☆☆☆★★だ。
読んで損はしないが、前2作にあったような緊張感や格調の高さが薄れている。
ハンニバル・レクターの生い立ちから、少年時代に培われた自我、
戦争の極限状態がもたらしたある不幸な事件と記憶の喪失、
そして記憶を取り戻す旅と新しい行動が描かれている。プロットは複雑でなく、物語は過去から現在へと語られる。
戦争がいかに人間を崩壊させていくのかという行動の描写にかなりの部分が割かれているが、
同じようにレクターの内面でどのようなことが起こっているのかをもっと描いて欲しかった。
こういう小説はどちらかと言えば趣味ではなく、怖いもの見たさのような気持ちで読むことがある。
読んだ感想を端的に言うと、『羊たちの沈黙』には緊張感で劣り、『ハンニバル』には迫力と気持ちの悪さで劣る。全体的には惜しい作品だ。
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『羊たちの沈黙』は小説も映画も秀逸だった。映画は当時公開されていた映画の水準から抜きん出て、これは傑作だと思った。
『ハンニバル』は衝撃的で、こんなにグロテスクな小説があるだろうかと思った。不快で不愉快極まりない小説で、まさにタブーを冒していると思った。具体的には驚くべきラストにあるのだが、前作に出演したジョディ・フォスターが出演を拒否したのも、このセンセーショナルなラストにあった。
『ハンニバル・ライジング』の不満は、青少年期の心理描写のディティールが不十分なことで、ハンニバルの「心の闇」が解明されないことだ。
つまらないわけではなく、どちらかというと面白い小説だが、『羊たちの沈黙』、『ハンニバル』の前2作の高みには到達していないように思った(『レッド・ドラゴン』は未読)。
この題材、この登場人物であればもっと描けたはずだ。そういう意味で惜しい小説だ。
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