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マーラー・交響曲第6番「悲劇的」


マーラー交響曲の中で、フツーの曲は1、5、6、7、9番だ(未完の10番は除く)。


内容的には6番、7番、9番などもフツーではないのだが、ここでフツーといったのは器楽のみの交響曲という意味で、2、3、4、8番と「大地の歌」には声楽が入る。


8番などは、「千人の交響曲」として知られており、複数の独唱者と複数の合唱団を必要とする、きわめて規模の大きな作品で、同じ交響曲でもハイドンの古典的な交響曲と同じジャンルとは思えない。交響曲の範疇を大きく超えている。


マーラー交響曲第6番「悲劇的」。


「悲劇的」という副題で知られる6番は、フツーの形をとっているものの、内容的にはドロドロしていて深い、マーラー円熟の傑作だ。


聴きどころは全曲に渡っており、どこを取り出しても凄みのある曲だ。咆哮する金管。低弦がブンブン動く冒頭。哀れみと慈しみに満ちた第3楽章。第4楽章のハンマー。フィナーレの衝撃的な和音。


中でもフィナーレの和音には驚く。これが演奏に1時間以上かかる長い曲の結末だとは。「悲劇的」であるゆえんだと思う。


◇  ◇  ◇


テンシュテット

マーラー:交響曲第6番

マーラー:交響曲第6番


テンシュテット盤。作曲者への共感に満ちた演奏。ライブ録音であることも手伝って、思い入れが尋常でない。マーラーとともに心中するような演奏だ。冒頭のエネルギーが最後まで続く。フィナーレの強烈な和音は「絶唱」という感じだ。


ブーレーズ


ブーレーズ盤は、ウィーンフィルだし、音質が抜群に良くて、冷静な演奏だが、肝心の部分は蒙昧、ぼんやりとして見えない、一風変わった演奏だ。「こんなマーラーマーラーじゃない」という意見もあるかもしれない。ドラマも他人事。とても客観的で、全然物語に入り込んでいないように見えて、強くオススメする必要もないかと思うと、そうではなくて、第3楽章が絶品だ。これは「枯れの極致」とでもいうべきか、悟りきっていて、文句なしに美しい。


アバド

マーラー:交響曲第6番

マーラー:交響曲第6番


第2楽章と第3楽章を入れ替えて演奏している。演奏は客観的で隅々まで指揮者の意図が行き届いているような感じ。指揮にも演奏にも職人的な上手さが出ている。同じように音質の素晴らしいブーレーズ盤と違って茫漠とした感じはなくて、アッサリした中にも骨格がしっかりと見える。緻密。


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