エレーヌ・グリモーが弾くラフマニノフ/ショパン
不勉強にしてこれまでエレーヌ・グリモー(Hélène Grimaud)のCDを聴いたことはなかったが、その理由の一つにビジュアル先行のピアニストと誤解していたことがある。
こんなに骨太の音楽を聴かせる演奏家だとは思わなかった。失礼しました、という感じだ。
- アーティスト: グリモー(エレーヌ),ショパン,ラフマニノフ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/02/02
- メディア: CD
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ショパン:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調「葬送」op.35
ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調op.36
ショパン:子守歌変ニ長調op.57
ショパン:舟歌嬰へ長調op.60
死は−間違いなく−生のさなかにあります。その事実を捉えた私たちの意識を、葛藤のすえにそこから解放させてくれるのは愛だけです。ショパンとラフマニノフは、それぞれにこの底知れぬ神秘について考え、それを音楽に移しかえました。死は究極の終わりです。と同時に、驚くべき逆説として、命が再び力を取り戻す中心点へと精神を導くのも、死のみなのです。この力を、ショパンもラフマニノフも、それぞれのソナタ第2番で表現しています。永遠へと扉を開く作品です。この2曲は、愛を抱くすべての人へ向けて、愛自身がとりおこなう死者へのミサなのです。(「ユニバーサル・クラシックス」内のエレーヌ・グリモーのページより引用)
グリモーは、フランス生まれでありながらフランスものをあまり録音していない。ロシアものやドイツものなど重厚な音楽に関心が向いているようだ。
ショパンのピアノソナタ第2番は「葬送」の副題で知られている通り、「ターンタタターン♪タータタータタータター♪」という有名な葬送行進曲を第3楽章に置く名曲。
グリモーの演奏は、ゴツゴツとしていてややうるさめのピアノで音色の透明さよりは激しさと静かさのギャップで聴かせる。第3楽章、第4楽章は闇を連想させる沈静な演奏。没入。不気味で妖しい魅力がある。
ラフマニノフの演奏はさらに秀逸だ。ピアノ協奏曲第2番のスケール感を思わせる第2楽章では音楽の悶えに気持ちがシンクロする。第3楽章は鬼気迫る熱演。
パッションのこもった演奏だ。
残りの2曲、ショパンの「子守唄」と「舟歌」も気持ちが入っていて良かった。とくに私はショパンの「舟歌」が大好きなのだが、この演奏にはじゅうぶん満足できた。
やや乱暴ではあるが熱のこもったタッチ。センシティブ。スピリチュアル。とても個性的なピアニストで、同じように個性的な女性ピアニスト、アルゲリッチとはまた一味違う個性だ。
そんなエレーヌ・グリモーにシューマンのピアノ作品「クライスレリアーナ」や「森の情景」などを録音してもらいたいと思うのは私だけだろうか。ピッタリだと思うのだが。
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