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マーラー・交響曲第1番「巨人」


マーラー交響曲第1番「巨人」はこれからいっそう「花の章」付きが一般的になっていくのではないか。


「花の章」とは、この曲の一部として書かれた音楽で、もともとは第2楽章に配置されていた。


ラトル×バーミンガム市響の録音を筆頭に、メータ盤でも「花の章」が収録されていたし、ジンマン×チューリヒ・トーンハレ管の録音もそうだ。未聴だが、ノリントン盤などは「花の章」が第2楽章に配置される版の楽譜を使用している。これから新しく出る録音は、この現象を無視できないだろう。


Symphony No 10

Symphony No 10


「花の章」はたいへん美しい。たおやかで甘美な音楽だ。


最終的には、「花の章」は削除され、現在の4楽章構成の交響曲となった。


いま知られている「巨人」にそのまま組み込むと不自然だが、収録されていれば独立した楽曲として楽しめるし、この曲の原始的な姿を想像する楽しみもある。お得。


◇  ◇  ◇


初めて「巨人」を聴いた時は、なんてユニークで魅力的な交響曲なんだろうと思った。親しんでいたモーツァルトベートーヴェン交響曲とは聴いた感じが全然違うので、クラシック音楽というのはなんと深遠な音楽なのかと思った。


第1楽章はベートーヴェンの「田園」のようだと思った。牧歌的だ。

迫力いっぱいの第2楽章。飄々としてユーモラス。

第3楽章は不器用にディフォルメされた美しさ。グロテスクとさえいえる。美しさを突き詰めていくと醜さになるのではないかと思った。

第4楽章。強烈な冒頭。苦難にのたうちまわる。そして最後に勝利する。


マーラー交響曲は後期のものになればなるほど一筋縄ではいかなくなり、取っ付きが悪くなっていく。そこがマーラー好きにとっての魅力でもあるのだが、好きな人にとっては堪らない「くさや」とか「ふなずし」(私はどちらも苦手)みたいなものか。


そんな中で、第1番「巨人」はわかりやすく、適度な激しさもあって誰にでも楽しめる。


■ラトル×バーミンガム市響盤

マーラー:交響曲第1番「巨人」

マーラー:交響曲第1番「巨人」

バーミンガム市響がラトルのもとで急激な上り調子にあった頃の録音。若いマーラー、若い指揮者、上げ潮のオーケストラがとてもよく合っている。「花の章」付き。


■ジンマン×チューリヒ・トーンハレ管盤

Symphony No 1 (Hybr)

Symphony No 1 (Hybr)

弦のアンサンブルがとても美しい。どこか涼しげだ。室内楽的な明晰さがある。「花の章」付き。


ワルター×コロンビア響盤

マーラー:交響曲第1番

マーラー:交響曲第1番

ワルターマーラーの弟子だったこともあって、その解釈は師への敬愛と共感に溢れている。コロンビア響はワルターのレコーディングのための新設オーケストラだったので音の厚みはやや貧弱だが、メロディラインは美しく歌い上げられている。全曲にわたってワルターの温かい思いが語られるようだ。


バーンスタイン×コンセルトヘボウ盤

コンセルトヘボウの音色の、優雅でくすんだ美しさと、バーンスタインのゆったりとしたテンポが素晴らしい。音楽家として、人間として、バーンスタインのスケールの大きさを感じさせる。音質は現在の水準で考えてもが良いといえるので楽しめる。


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