マーラー・交響曲第1番「巨人」
マーラーの交響曲第1番「巨人」はこれからいっそう「花の章」付きが一般的になっていくのではないか。
「花の章」とは、この曲の一部として書かれた音楽で、もともとは第2楽章に配置されていた。
ラトル×バーミンガム市響の録音を筆頭に、メータ盤でも「花の章」が収録されていたし、ジンマン×チューリヒ・トーンハレ管の録音もそうだ。未聴だが、ノリントン盤などは「花の章」が第2楽章に配置される版の楽譜を使用している。これから新しく出る録音は、この現象を無視できないだろう。
- アーティスト: Baden- South West German Radio Symphony Orchestra,Gustav Mahler,Michael Gielen
- 出版社/メーカー: Hanssler Classics
- 発売日: 2006/02/14
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (2件) を見る
「花の章」はたいへん美しい。たおやかで甘美な音楽だ。
最終的には、「花の章」は削除され、現在の4楽章構成の交響曲となった。
いま知られている「巨人」にそのまま組み込むと不自然だが、収録されていれば独立した楽曲として楽しめるし、この曲の原始的な姿を想像する楽しみもある。お得。
◇ ◇ ◇
初めて「巨人」を聴いた時は、なんてユニークで魅力的な交響曲なんだろうと思った。親しんでいたモーツァルトやベートーヴェンの交響曲とは聴いた感じが全然違うので、クラシック音楽というのはなんと深遠な音楽なのかと思った。
第1楽章はベートーヴェンの「田園」のようだと思った。牧歌的だ。
迫力いっぱいの第2楽章。飄々としてユーモラス。
第3楽章は不器用にディフォルメされた美しさ。グロテスクとさえいえる。美しさを突き詰めていくと醜さになるのではないかと思った。
第4楽章。強烈な冒頭。苦難にのたうちまわる。そして最後に勝利する。
マーラーの交響曲は後期のものになればなるほど一筋縄ではいかなくなり、取っ付きが悪くなっていく。そこがマーラー好きにとっての魅力でもあるのだが、好きな人にとっては堪らない「くさや」とか「ふなずし」(私はどちらも苦手)みたいなものか。
そんな中で、第1番「巨人」はわかりやすく、適度な激しさもあって誰にでも楽しめる。
■ラトル×バーミンガム市響盤
- アーティスト: ラトル(サイモン),マーラー,バーミンガム市交響楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2002/10/25
- メディア: CD
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
バーミンガム市響がラトルのもとで急激な上り調子にあった頃の録音。若いマーラー、若い指揮者、上げ潮のオーケストラがとてもよく合っている。「花の章」付き。
■ジンマン×チューリヒ・トーンハレ管盤
- アーティスト: Gustav Mahler,David Zinman,Zurich Tonhalle Orchestra
- 出版社/メーカー: RCA
- 発売日: 2007/01/23
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
弦のアンサンブルがとても美しい。どこか涼しげだ。室内楽的な明晰さがある。「花の章」付き。
■ワルター×コロンビア響盤
- アーティスト: ワルター(ブルーノ),マーラー,コロンビア交響楽団
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
- 発売日: 2004/11/17
- メディア: CD
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
ワルターはマーラーの弟子だったこともあって、その解釈は師への敬愛と共感に溢れている。コロンビア響はワルターのレコーディングのための新設オーケストラだったので音の厚みはやや貧弱だが、メロディラインは美しく歌い上げられている。全曲にわたってワルターの温かい思いが語られるようだ。
■バーンスタイン×コンセルトヘボウ盤
- アーティスト: アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団,マーラー,バーンスタイン(レナード)
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1997/09/05
- メディア: CD
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
コンセルトヘボウの音色の、優雅でくすんだ美しさと、バーンスタインのゆったりとしたテンポが素晴らしい。音楽家として、人間として、バーンスタインのスケールの大きさを感じさせる。音質は現在の水準で考えてもが良いといえるので楽しめる。
(↓面白かったらブログランキングに応援よろしくお願いします。)
人気blogランキングへ