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大阪クラシック2007・大植英次×大フィルのチャイコフスキー「悲愴」


世界陸上の興奮も冷めやらぬ中、大阪では、大阪フィルによるクラシック音楽のイベント「大阪クラシック」が行われている。


この1週間、午後から夜にかけて、大阪の御堂筋界隈では、カフェ、会議室、デパート、企業のショールーム、コンサートホールなど様々な会場で、大フィルメンバーによるリサイタルやミニコンサートが行われている(→大阪クラシックに関する過去の記事はこちら)。


無料コンサートや低価格のコンサートも多く、報道や個人のブログなどを見ても相当な熱狂ぶりが伝えられているのだが、日中は仕事があるので私は一度も観に(聴きに)行けなかった。


今日のメインプログラムは、この時間ならいけるということで事前にチケットを購入していたオーケストラの公演。19:30よりザ・シンフォニーホールにて。


http://www.osaka-phil.com/nwimages/20070727.jpg

大阪クラシック2007
9月7日(金)第8公演 19:30開演

会場:ザ・シンフォニーホール
指揮・ピアノ:大植英次
管弦楽大阪フィルハーモニー交響楽団
プログラム:
モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番より第2楽章
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」


モーツァルトは大植さんの弾き振り。


ピアノとオーケストラとのあうんの呼吸がバッチリだった。通常、コンチェルトではソリストとのリハーサルの時間が十分に取れないことが多いため、ぶっつけ本番に近い演奏となって、ソリストとオーケストラの呼吸が全然合わない奇天烈な演奏に出くわすこともあるのだが、今日はバッチリだった。何と言ったって音楽監督が弾き振りをしているのだから。

大植さんのピアノは実直でミスもなかった。弱音の繊細な表現力などを問えば本職のピアニストに譲るが、なんというか誠実な演奏だった。コンチェルトの演奏として高いレベルでまとまっていた。第2楽章だけといわず、全曲通して聴きたいと思った。


◇  ◇  ◇


チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」は、大植さんの代役としてクラウス・ペーター・フロール氏が振った昨期の第405回定期演奏会、つまり今年の2月22日(木)と23日(金)の演奏以来。


クラウス・ペーター・フロール氏のときも悪くはなかったが、指揮者の欲というか、悪く言うとあざとさみたいなものが出てしまって、完全に消化しきった演奏ではなかったように思った。それが今日は指揮者が代わると演奏も変わるという見本のような違いで、素晴らしい名演奏だった。


それに対し今日は、確信に満ちた演奏だった。「大フィルは奇を衒ったことやらずにこのままでよい」というメッセージのように、全体的に中庸のテンポを守りスケールの大きさを見せる。第3楽章でティンパニの音量がやや大きすぎて中間の音が欠落しているような印象を持ったが(しかしその分、第3楽章の盛り上がりは相当なものだった)、それ以外は音量のバランスも素晴らしくまとまっていて、最後まで安心して聴きとおした。ここ最近の定期演奏会で絶好調なのが弦楽器。音色は素晴らしく、第2楽章のヴィオラ、第3楽章出だしのヴァイオリン。美しい音色に痺れた。第4楽章、トゥッティの啼きの表現。切なくて悲しい大人の音楽だ。あとはフルートやファゴットなど木管の正確さと音色の艶やかさも特筆すべき点だった。


大フィルの「悲愴」は、2005年2月24日(木)に「スマトラ沖大地震チャリティコンサート」として、ヒラリー・ハーンがソリストとして登場した時の演奏も知っている(ヒラリー・ハーンはプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲のソリストとして登場)。


もう2年以上も前のことなのではっきりと覚えていないが、今日の演奏はその時よりも数段レベルアップしていると思った。表現の大筋は代わらないが、より濃密で正確な演奏となっている。勢いに任せた部分は消え、団員の音楽性やモチベーションも上がってきているのか、音楽が円熟の高みに達していると思った。


大フィルの2年間の進歩を感じる今日の演奏だった。


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