USHINABE SQUARE

クラシック名盤・名曲と消費 生活 趣味

マイケル・ムーア監督『シッコ(Sicko)』


土曜日に『シッコ(Sicko)』(→日本語版公式HPはこちら)を観た。


華氏911』のマイケル・ムーア監督による、アメリカの医療システムの問題点を描いたドキュメンタリー映画


重いテーマの映画だったが、色々と考えさせられる素晴らしい映画だった。


http://sicko.gyao.jp/wp/wp1s.jpg
(↑画像は公式ホームページより転載)


「電動ノコギリでの仕事の作業中に誤って中指と薬指を切り落としてしまったが、経済的に余裕がなくて病院への支払能力がないため、高価な中指は諦めて安価な薬指だけ接合してもらった。」


「病院にいくとお金がかかるので傷口を自分で縫う。」


「夫婦共働きの一般的な中流家庭だったが、夫婦の病気によって破産。家を売って娘夫婦の家の物置に居候している。」


「最愛の夫がガンに。手術の必要のある病気なのに保険会社から手術の緊急性が認められないということで手術の許可が下りず(医療費が高額のため保険会社と契約しているにもかかわらず)、そのうち亡くなってしまった。」


「9.11テロの救助作業で肺を悪くするが、愛国心から国のために行動したにもかかわらず、様々な制約があって政府の援助を受けられない。」


「治療費を支払えない患者を病院が強制的にタクシーに乗せて追い出して途上に捨てる。」


これらが特殊な例ではなくて、アメリカでフツーにあるというから怖い話だ。


◇  ◇  ◇


根底には、先進国にもかかわらず国民皆保健制度が実現できていない、アメリカ特有の問題がある。高額な医療費が全額自己負担となる。病気になったら終わり。そんな凄まじい社会。


国は面倒を見ない。病気になる心配のある人は民間の保険会社と契約すればよい。しかし保険会社へは誰でも加入できるわけでなく、給付段階での審査も非常に厳しい。手術の必要なしとされる事例があまりにも多い。なぜなら手術の審査に関わる医者は保険会社とつるんでいて、給付額を削り、給付の対象者を削ることで評価を上げるからだ。そのうち患者の病気は悪化してしまう。一番大事な患者の姿がそこにはない。


民間の保険会社、病院・医師、製薬会社、政府が協同して一部の特権階級の利益だけを維持・存続・拡大させる構図が出来上がっている。


対照的に、手厚な医療制度を持つイギリス、フランス、キューバの姿が描かれる。


この部分では、映画ゆえのディフォルメなどが多々見られたが、大筋では、アメリカの医療制度の異常性が浮かび上がった。


アメリカは豊かな国だと思っていたが、医療に関しては恐ろしく遅れているし、人の命の重さをなんとも思わない、とても暴力的なシステムに思えた。


日本がアメリカみたいになったら大変だ。そんな恐ろしい未来があるかもしれない。しかし違う未来もあるはずだ。率直に思ったのはそんなことだった。


(↓面白かったらブログランキングに応援のクリックよろしくお願いします。)
にほんブログ村 クラシックブログへにほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
人気blogランキングへ