エレーヌ・グリモーの「皇帝」&ピアノソナタ28番
エレーヌ・グリモーによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。
これが実に素晴らしい演奏で、演奏・録音しつくされた「皇帝」に新しい録音でこれだけ良いものがあることにビックリした。早くも私のiPodのヘビーチューンとなっている。とても丁寧に磨き抜かれた演奏だ。
- アーティスト: グリモー(エレーヌ),ベートーヴェン,ユロフスキ(ヴラディーミル),ドレスデン国立管弦楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: CD
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第1楽章。聴き慣れた旋律に新しい魂が吹き込まれるようで、聴いていて新鮮な気持ちとなった。エレーヌ・グリモーのピアノの音色はどう表現してよいかわからないが、とても深みがある音色だ。ミケランジェリのピアノのような透明感のある音色でもなく、ツィマーマンのような気高い音色でもなく、特徴付けをしにくいが、この音は普通ではないと感じる。深い思索、曲への思い、厳しい研鑽。そんなものが詰まった音色。「精神性」、というと便利な反面よくわからなくなるが、そんな表現をせざるを得ない。
第2楽章は絶品。幽玄の美しさ。儚げだが芯の強さを感じる。美しい旋律の一音一音が慈しみをもって大切に弾かれている。
第3楽章。力強い。鋭く、強いタッチ。感情がこもっている。魂のあるピアノでベートーヴェンが描いた世界へ運んでくれる。
シュターツカペレ・ドレスデンのなめらかな音色も素晴らしい。やや軽めにシフトされている分、どっしりとした「皇帝」が好きな向きには不満かもしれないが、ピアノとの相性(タイミング、音色)はピッタリ。
名盤ぞろいの「皇帝」の中でも上位にランクされるCDだと思った。
◇ ◇ ◇
続くピアノソナタ第28番は、大作である第29番「ハンマークラヴィーア」の前作。
第1楽章。静かな始まり。最後まで泣かないし喚かない美しい旋律。
第2楽章。遊び心。複雑なテクニック。微妙なバランスで成り立っている。
第3楽章。フィナーレは素晴らしく、涙腺が緩んだ。ベートーヴェンの偉大さを改めて教えられたような気持ちだ。
こちらの演奏も「皇帝」に負けず素晴らしい。
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