アントニオ・パッパーノによる後期交響曲集
最近、アントニオ・パッパーノ指揮サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団による、チャイコフスキーの後期交響曲集、つまり4〜6番「悲愴」を聴いている。
- アーティスト: パッパーノ(アントニオ),チャイコフスキー,サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2007/04/18
- メディア: CD
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今年発売の新しい録音だが、何度か聴いているうちに、心をがっしりと掴まれた。
チャイコフスキーの後期交響曲のCDは、ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルの伝説的な名盤を筆頭に、カラヤン、バーンスタイン、スヴェトラーノフ、バレンボイム、小林研一郎、プレトニョフ、ゲルギエフなど、本当に数多くの録音が出ているが、このパッパーノのCDはそれの中でも輝きを放つ名演となっている。
まず、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の音色。華がある。和音の揃いや重厚な歩みよりは、イタリアのオーケストラらしく、それぞれのパート、それぞれの奏者が美しい音を出すことを何よりも優先している感じだ。そしてパッパーノの指揮は、ただそれらを好き放題にやらせるのではなく、引っ張ったり弛めたりしながら、歌に溢れた、瑞々しいサウンドを構築していく。
この歌心と瑞々しさ、若さ、新鮮さ、活気は、重厚なドイツのオーケストラとも、彩りと迫力があるフランスのオーケストラとも、機能的なアメリカのオーケストラとも違う個性だ。
4番。この曲はこういうアプローチが一番合っているかもしれない。バレンボイム盤もよかったが、繊細さではこちらの方が勝っている。第1楽章は煌びやか。音色が美しく飽きない。第3楽章も可愛らしい。フィナーレの華々しさは「これぞオペラの国イタリアのオーケストラ」という華やかさだ。
5番。これもまた素晴らしい演奏だ。流麗。第2楽章の美しさには言葉がない。アリアのように大事に歌われている感じだ。フィナーレの躍動感も相当なものだが、よくある「爆演」のような破綻がない。音楽として整っている。
6番「悲愴」の第3楽章。息の合った合唱を思わせる高揚感。第4楽章。慟哭。ここでの弦のサウンドにはあまりにも艶かしくてゾッとするほどだ。
ビビッドでダイナミックな演奏。しかし甘ったるくはならない。3曲ともとてもクオリティが非常に高いので交響曲集として大変に優れている。
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