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ロンドンで『シカゴ』〜ロンドン旅行(6)


3年くらい前にロンドンに行った時に、街の至るところ、大きな劇場から小さな劇場から小屋のようなところまで、様々な劇やミュージカルが毎日欠かさずに(日曜は休み)行われているのを知ってとても驚いた。


例えば日本では、人気劇団のミュージカルはとても人気で、ずいぶん前からチケットを取って開演に備えるのが普通なのでカルチャーショックを受けた。ロンドンではその気になれば、観たいその日にキャンセル待ちの列に並んで人気公演のチケットを押さえることも可能だ。金曜日や土曜日はマチネ公演もあって、1日に2回チャンスがある。


ロンドンのウエストエンドでは、毎晩、『ライオン・キング』、『オペラ座の怪人』、『レ・ミゼラブル』、『マンマ・ミーア』などの超有名なミュージカルも開かれている。しかもチケットは人気の公演であっても30ポンドくらいから設定されていて、それほど高価ではない。さすが、シェークスピアディケンズを生んだ国の首都・ロンドン。演劇都市。


◇  ◇  ◇


今回、以前に観たことのある『シカゴ』を再び観ることにした。映画にもなったミュージカルだ。チケットを現地で買うのが面倒だったので、日本から予約していった。


「アースナビ」(→HPへGO)で、滞在中の大体の公演を調べてから、劇場のホームページに行くと、「ロンドン・シアター・ダイレクト」(→HPへGO)というページがチケットを扱っていることを知ったので、そこで購入した。2階席で32ポンド50ペンスだった。


『シカゴ』はもともとはアメリカのブロードウェイ・ミュージカルだが、ロンドンでも1997年の12月18日以来ロングランが続いている。10年以上になると言うからすごい。2008年1月時点での公演会場はケンブリッジ・シアター。地下鉄トットナム・コート・ロード駅から南に向かって歩く。コヴェント・ガーデン駅、レスタースクエア駅のほぼ中間。文字通りの七叉路、セブンダイヤルズの一角にある。




ケンブリッジ・シアター・昼

ミュージカル『シカゴ』
ロンドン・ケンブリッジ・シアター公演データ


<製作>
Music by John Kander
Lyrics by Fred Ebb
Book by Fred Ebb & Bob Fosse
Directed by Walter Bobbie
Choreographed by Ann Reinking, in the style of Bob Fosse
Scenic Design by John Lee Beatty
Costume Design by William Ivey Long
Lighting Design by Ken Billington

<キャスト>
Roxy Hart:Bonnie Langford
Velma Kelly:Amra-Faye Wright
Billy Flynn:Duncan James
Amos Hart:Paul Rider
Mama Morton:Brenda Edwards
Mary Sunshine:T Solomon


ケンブリッジ・シアター・夜


ケンブリッジ・シアター内部


ストーリーは、演劇のスターを夢見るロキシー・ハートが、不倫相手を撃ち殺すところから始まる。動機は、彼が舞台のマネージャーにコネがあっていつか売り出してやると言っていたのが嘘だと知ったからだ。


監獄入りとなったロキシー。寒くて暗い監獄。


そこに一癖もふた癖もある登場人物たちが現れる。もう一人の女殺人犯、ヴェルマ・ケリー。うだつのあがらない、しかしお人よしの夫・エイモス。女看守ママ・モートン。辣腕弁護士ビリー。


ロキシーの弁護を引き受けたビリーはマスコミを扇動して、「美しく可憐で哀れな容疑者」というイメージをつくろうとする。シカゴの人はゴシップが大好き。しかし熱しやすく冷めやすい。そして…。


◇  ◇  ◇


不倫、殺人、癒着、世論操作。退廃的なストーリーだが、ショービジネスの華やかな舞台の裏側にある孤独や、主人公・周囲の動機がセンスよく描かれていて、とても興味深い作品だった。劇中で6人も人が死ぬのだが、音楽は限りなくポップで盛り上がる。殺人を、自分がスターになるための道具にしたり、飯のタネにしたり、ゴシップにしたりという行為は、悪趣味と言えるかも知れないが、現代はこういう退廃とは無縁だときっぱり言えるだろうか。『シカゴ』は消費社会を象徴するようで、普遍的な話だとさえ思った。


あと、歌のよさは特筆すべき点で、私はサントラまで購入してしまった。序曲から続けて歌われる「オール・ザット・ジャズ」から舞台にどっぷり入り込んでしまう。「セル・ブロック・タンゴ」は凄みがあり、「オール・アイ・ケア・アバウト」はシニカルだった。


親しみやすく耳に残る歌に、パワフルで美しいダンス。不健全で、欲望の錯綜するストーリー。2度目だがすっかり魅了された。


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帰国してから映画の方を見たら、こちらも素晴らしかった。ミュージカル映画は不自然なものもあるが、この映画では、歌を主人公の想像の世界として、セリフを現実の世界として、両者を描き分けることで不自然さをなくしていた。レニー・ゼルウィガーの演技(ダンス)と歌は、本職のダンサーにも負けず劣らずのものだった。インパクトがあり、かつ余韻も残る傑作だと思った。


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