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大フィル・第416回定期・すごいブルックナー


大阪フィル(以下、大フィル)の定期演奏会に行ってきた。今期の定期演奏会もこれで最後だ。


大植さんの振るショスタコーヴィチで幕を開けた今年の定期。井上道義さんのラプソディーは気の早い夏祭りのようだった。大植さんの急病によるキャンセル→指揮者なしでのブラームスの4番での凄演。下野竜也さんのシューマンの熱演。踊るラモン・ガンバ。大植さんが見事な復活を見せたラフマニノフ。今期はいろいろあった。


今シーズンのラスト。

大阪フィルハーモニー交響楽団
第416回定期演奏会


2008年3月13日(木)、14日(金)
18:00開場 19:00開演
ザ・シンフォニーホール


指揮:高関健
独奏:ジャニーナ・フィアルコフスカ(ピアノ)※

プログラム:
ショパン/ピアノ協奏曲第2番ヘ短調
ブルックナー交響曲第5番変ロ長調


http://www.osaka-phil.com/dbimages/20080313.jpg


まずはショパン。温かみのある、母性的なショパンだった。第2楽章の繊細な表現が良かった。小さな音がとても豊かだと思ったし、上品だった。良い意味でも悪い意味でも、若い人がやらない(できない)ような、「大人の」ショパンだった。指揮者の高関さんがオーケストラをしっかりとコントロールして、ピアノにピッタリと合わせていたのが印象的だった。


そしてブルックナー。私はブルックナー交響曲では5番がもっとも好きだ。


ブルックナー交響曲の中で、5番は最も荘厳で厳しい曲で、演奏時間も後期の傑作・8番に次いで長い。80分に迫ろうかと言うほどだ。聴く方も大変だが、演奏する方はもっと大変だ(しかも2日公演なのでハードだ)。


今日の演奏会では、ショパンも悪くはなかったが、ブルックナーはとんでもない、超ド級の素晴らしい演奏だった。こんなスケールの大きな音楽を聴かせられたら、これは勝負にならない。


オーケストラは第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置。コントラバスは舞台左奥。

高関さんは、ショパンでは譜面を見ながらの指揮だったが、ブルックナーではこの長大な曲を暗譜で振る。


大フィルとブルックナーは相性が良い。豪快な演奏能力が生きる。


しかし、たんなる爆発・花火に終わらせないところが、今日の高関さんの優れたところだった。第2楽章のゴツく不器用で美しいアダージョブルックナーアダージョ楽章は滑らかではないが泣ける)。そして第4楽章の複雑な進行なども完璧だった。響きは濁らず、動きはバタつかず、豪快な中に繊細さを感じさせる演奏だった。テンポ設定も絶妙で、スケールの大きさを感じさせた。


音の迫力と美しさは大フィルならではだった。2楽章などでの、まとわりつくような弦の音色も絶品だった。大フィルの弦には重さがある。分厚い。そして咆哮する金管。煌びやかだった。ホルンが最初の方はガタガタだったが、だんだん持ち直してきた。木管は素朴で、時に勇ましさも見せた。ティンパニは節度があって良かった。実直だった。


長い曲が短く感じられ、聴いた後にはなんともいえない充足感が残った。すぐれたブルックナーを聴いた後は、肩凝りが治ったような、ストレスがなくなったような、病が感知したような、いわば癒されたような感覚になる。神を信じる人なら「演奏に神を見た」と言うかもしれないと思った。


いつもなら終演と同時に拍手と「ブラボー」が鳴り響くのだが、最後の音が鳴り終わった後、時間が止まったかのように、2秒ほどの静寂があった。静寂。一瞬が永遠のように感じられる。そして怒涛のような拍手。指揮者の気迫に押されたような雰囲気だった。


今期の定期演奏会の最後を飾るのにふさわしい、素晴らしい演奏会だった。


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