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プレトニョフのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集


本シリーズは、2006年9月にボンで行われたインターナショナル・ベートーヴェン・フェスティバルでライヴ収録され、2007年3月から約10ヶ月かけて順次発売され、今年の1月に5番「皇帝」が発売されて完結した。


ミハイル・プレトニョフという音楽家は、一昔前のロシア−ソ連の政治家のような、笑わない、コワモテな外見とは裏腹に、創造性や、オリジナリティ、柔軟性を感じさせる、スケールの大きな音楽家で、現代ロシアを代表する音楽家だ。


ピアニストしてはチャイコフスキー国際コンクールで優勝(1978年)、カーネギーホール・デビューの成功、数々のすぐれた録音を残し、指揮者としても、私設のロシア・ナショナル管弦楽団を立ち上げ(1990年)、音楽監督として世界でも有数の演奏能力を誇るオーケストラに鍛え上げている。傑出した才能の持ち主だ。


プレトニョフのスタイルは、ベートーヴェンの楽曲でさえも楽譜の改編も厭わない攻撃的なスタイルで、作為や「やりすぎ」を感じる一歩手前という感じ。好きか嫌いかと聞かれると、「微妙」なところなのだが、好みに合ったときやツボにはまったときの演奏のクオリティはとても素晴らしい。また、プレトニョフ節が炸裂の、ベートーヴェン交響曲全集が記憶に新しい(→過去のブログはこちら【ミハイル・プレトニョフのベートーヴェン交響曲全集】)。


現在は残念ながらピアニストとしての活動は休止してしまっているが、私は指揮者・プレトニョフよりもピアニスト・プレトニョフのほうが好きなので、考え直して欲しいと思っている今日この頃だ。


ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番&第3番

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番&第3番

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番&第4番

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番&第4番

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」


1番から5番「皇帝」まで、どれも聴きどころ満載だが、私は、2>5>3>4>1の順で優れている、と思った。


2番の完成度は相当高く、軽やかで美しい。機知、驚き、発見に満ちた、新しいベートーヴェン像を見せてくれる。


5番は冒頭から「えっ?」と思うくらいのテンポの遅さ。個性的。たどたどしい、思わせぶりな始まりだと思ったが、ライブなのでこういうのもアリだろう。観客は息を呑んだかもしれない。全体的には大柄で野性的で力強い「皇帝」だ。これはピアノ入りの交響曲なのだ、と思わされるようなスケールの大きさだった。


3番も良い。ベートーヴェンの5つのピアノ協奏曲の中で唯一の短調の曲で、本来は悲しい曲なのだが、プレトニョフの演奏では暗くジメジメした感じにならない。第2楽章が慕情的で素晴らしい。第3楽章もリズムの歯切れがよく、申し分ない。


4番は私が最も好きな曲だが、このCDでは普通だ。1番はかなり恣意的というか個性的なのだが、効果はいまひとつと思った。もっとシンプルな方がこの曲が輝くと思う。


ロシアのオーケストラの肉厚な響きと(全体を通してオケが抜群に良い!)、ピアノの音色の美しさ、テクニックの素晴らしさ、力強さは特筆すべき点で、この演奏のスタイルが好きでなくても楽しめる。


個性的な演奏なので好みは分かれるかもしれないが、一聴の価値ある演奏だとは思う。


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