大フィル・第417回定期〜すごいラフマニノフ
大植英次さんが振る、大阪フィル(以下、大フィル)の定期演奏会に行ってきた。プロ野球に比べると約1ヶ月遅れ、大阪フィルの2008/2009シーズンがいよいよ開幕だ。
大阪フィルハーモニー交響楽団
第417回定期演奏会
2008年4月20日(月)、21日(火)
18:00開場 19:00開演
ザ・シンフォニーホール
指揮:大植英次
独奏:長原幸太(Vn)※プログラム:
▽アルベニス/カタルーニャ狂詩曲
▽ラロ/スペイン交響曲 ニ短調 作品21※
▽ラフマニノフ/交響的舞曲 作品45
結論から言うと、今夜の演奏会はラフマニノフが圧倒的な熱演だった。
◇ ◇ ◇
アルベニスは珍しい曲だが、観客のハートをしっかりつかんだ。リラックスした雰囲気で演奏され、パートのバランス、テンポにやや違和感を感じる部分もあったが、じゅうぶん良いスタートを切った。楽しい曲、興味深い演奏だった。
ラロのスペイン交響曲は、ソリストの長原幸太さんに尽きる。音の輝き、響き、正確さ、素晴らしい超絶技巧だった。全体的にはドライで、情緒過多にならない点も好ましかった。
そして後半。これが凄まじい演奏だった。
ラフマニノフは、大植さん(&大フィル)にとって相性が良い作曲家だと、私は思っている。ベートーヴェンではやや物足りなさが残る(期待が大きいため辛口にならざるを得ない)が、ロマン派の作曲家には最もフィットすると思う。ベルリオーズ、チャイコフスキーなども良い。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番や交響曲第2番が甘い甘いチョコレートなら、交響的舞曲は甘さ控えめ・微糖の缶コーヒーだ。
ラフマニノフの晩年の作品だけあって、喜怒哀楽の人生の様々な経験が溶け出たような、甘さの中に苦味がきいた名曲だ。焼酎に例えると、「百年の孤独」のように複雑な旨みを持っている。ポピュラーな曲ではないが、私は好きな曲だ。
この曲は3楽章構成の管弦楽曲で、作曲家自身によれば、それぞれが「朝」、「昼」、「夜」を表現していたと言われている。巨大なスケールで、内容的にも重い作品なので、こんな一日があったら恐ろしいと思うのだ。
第1楽章は、何よりまず、引き締まっていた。前のめりせずに揃っていた。期待通りの演奏だったので嬉しかった。深みのあるサックスの音色が素晴らしい。
第2楽章。マーラーのアダージョ楽章のように陶酔的。ほろ苦い大人の音楽だ。大フィルの弦の厚みはいつもながらすごい。
第3楽章。グレゴリオ聖歌「怒りの日」からの引用がある。昨シーズンのベルリオーズの幻想交響曲を思い出す。渾身の指揮。懸命に応える演奏だった。フィナーレの盛り上がりは常軌を逸した、と言えるような燃焼度だった。こんなにレベルの高い演奏を聴かせられたら言葉も出ない。
観客席は熱狂というよりも、困惑を表わしていた。少し珍しい光景だった。終わった瞬間チラホラ聞こえる拍手のあとは「戸惑い」。しかし時間とともに我に返る。ワンテンポ置いてその後、盛大な拍手が起こる。待ち望んだ今期最初の定期演奏会。
帰りの、混んだ電車のことを考えると、いつもなら早く席を立ちたいのだが、今日はずっと座って拍手をしていたい。私はそんな気分だった。
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