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ベーム&ウィーン・フィルのブルックナー4「ロマンティック」


ベームウィーン・フィルによるブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」。


ブルックナー:交響曲第4番

ブルックナー:交響曲第4番


このCDほど「名盤」という表現がふさわしい録音も珍しい。


ベームブルックナーを得意とした指揮者というわけではなかったが(ベームの名演では真っ先にモーツァルトが浮かぶ)、この4番「ロマンティック」は、「一体どうしたんですか!?」と思うくらい、突然変異的に傑出している。


ゆったりとしたテンポ。几帳面さ、力強さが同居する名演。強固に積み上げられた音の建造物がある。


ブルックナー交響曲は、8番と9番を別格の傑作とするほか、5番と7番をそれに次ぐものとする傾向・風潮があるが、ベームの演奏で聴くと、4番こそ、8、9番に共通する別格の存在のような気がする。


4番はブルックナー入門に最適な親しみやすい作品と言われるが、ベームの演奏では、親しみやすいうえに、入り込んでいっても底が見えない。どこまで深いのか、見当もつかず、ただ深いとしか言いようがない、深遠が広がっている。


第2楽章などは森の緑の翳りのようであるし、深い闇のようでもある。その印象は『もののけ姫』の森のようで、生き物だけでなく精霊も見えそうだ。そして、第4楽章からは、8番や9番を聴いているような重みが感じられる。神と音楽に人生を捧げたブルックナーの精神が宿っている。


◇  ◇  ◇


ちなみにベームは、生前からオーケストラの団員の多くから評判がたいへん悪かった。厳格で冷酷で、些細なミスを見逃さず、大勢の団員の前で罵倒する。典型的なカペルマイスター(宮廷楽長)と言われた。


生前のベームに会った音楽評論家の吉田秀和さんによれば、ベームは話題もきわめて身近なことに限定されていて、霊感も格別感じられない、中肉中背の普通の人物だったらしい。


(↓ベームの人物評は、この本に詳しい。)


世界の指揮者―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

世界の指揮者―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)


そんな官僚的な人物が、これほどの霊感に満ちた名演を生み出すのが、クラシック音楽の面白い点のひとつだ。


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