大フィル・第419回定期・充実の英国プログラム
大阪フィル(以下、大フィル)の6月の定期演奏会に行ってきた。
今夜は英国プログラム。
大阪フィルハーモニー交響楽団
第419回定期演奏会
2008年6月12日(木)、13日(金)
ザ・シンフォニーホール 18:00開場 19:00開演
指揮:大植英次
独奏:ダニエル・ホープ(Vn)※
曲目:
ヴォーン=ウィリアムズ/タリスの主題による幻想曲
ブリテン/ヴァイオリン協奏曲 作品15※
エルガー/エニグマ変奏曲 作品36
このところの大植&大フィルのテンションの高さは尋常でない。昨年のベートーヴェン・チクルスの頃には大植さんの体調不良の影響もあったのか、方法を試行錯誤していたのか、聴いて若干の度惑いを感じることがあったのだが、近頃はそんなことがなくなった(昨期のラフマニノフの交響曲第2番あたりから上昇気流にあるように思う)。
迷いがない。曇りがない。エモーショナル。スケールの大きさと分厚いサウンド。これこそ大植&大フィルサウンドをいうものを聴かせている。
◇ ◇ ◇
ヴォーン=ウィリアムズ。右手にヴィオラ、左手に第一ヴァイオリンが位置する通常配置だが、弦楽器の一部が左手奥から左手前にかけてに一列に並んで外側から包み込むような独特の配置。
管楽器と打楽器が入らない、弦合奏のみの曲。大フィルの弦セクションの現在の好調さがよく出ていた。ヴィオラのソロが素晴らしかった。
ブリテン。ソリストはダニエル・ホープ。グラモフォンからCDも出している有名ヴァイオリニスト。演奏は前に前に出て行くような、アグレッシブなスタイル。テクニックは超絶テクで、強音は激しく、弱音はきわめて美しかった。
どこをとっても面白い曲だった。難解と言えば難解な、いわゆる現代音楽なのだが、こういう曲は生で、それぞれのパート、それぞれの奏者の動きを見ながら、そして指揮者の動きを見ながら鑑賞すると、CDで聴くより何百倍も面白い。絶妙のタイミングで意図どおりの音が出た時に指揮者が見せる、小さなガッツポーズ(親指を上げて奏者に合図)が今夜はよく見られた。
大植さんは協奏曲が得意だと私は思っている。指揮者のセンスが卓越しているのに加え、オーケストラの力量が上がってきているから、オーケストラパートが正確で、ソリストとよく調和していた。協奏曲の演奏のひとつの完成形だと思った。
エルガーのエニグマ変奏曲。これはもう、凄まじい音の饗宴だった。好みの演奏かといわれればそうではなかったのだが(打楽器・金管が大きすぎてバランスを欠いたように思う)、そんなことはどうでもよいくらいの燃焼度だった。
第4変奏(W.M.B)。第7変奏(Troyte)。第12変奏(B.G.N)。炸裂した。
第9変奏(Nimrod)はエルガーらしい抒情的な名曲。固唾を呑んで見守った。
第14変奏(E.D.U.)。フィナーレを飾る曲。5分少々の曲だが、『エニグマ』の中では演奏時間がもっとも長い。ドラマチック。最後はここまでやるかと思うほどの盛り上がりだった。
とくに打楽器の強さが好みでなかったが、全体的にはとんでもない熱演だった。まるでブルックナーの後期の交響曲を演奏するかのような一生懸命さと終始全開ぶりだった。
今夜は最近の大フィルの充実ぶりが最もよく出た、素晴らしい演奏会だった。明日の勇気を与えられるような、元気が出てくるような演奏で、清々しい気分で会場を後にした。
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