エレーヌ・グリモーのブラームス・後期ピアノ曲集
ブラームスのピアノ曲を最初に聴いたときはいまひとつ、ピンとこなかった。
シューベルトのピアノ曲の地味さとはまた違う暗さを持ち、地味な内省的な楽曲が多く、気持ちにシンクロする部分が少なかった。どちらかといえば苦手な曲だった。しばらく聴かない時期が続いた。
バラード。ラプソディ。幻想曲集。そのほかの小品。
時々取り出して、何回も聴きなおすうちに、だんだん印象が変わってきた。おでんのダシがしみこんでくるように、二日目のカレーがおいしいように、ビールの肴のスルメのように、何とも言えない味わい深さが出てきたのだ。
今では出会って良かったと思える音楽のひとつとなっている。
- アーティスト: グリモー(エレーヌ),ブラームス
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2002/10/23
- メディア: CD
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エレーヌ・グリモーはフランス生まれだが、ドイツものを得意のレパートリーとしている。この姿勢はデビュー時から現在まで一貫していて、ブラームスもまた例外ではない。
このCDには、下記の曲が収録されている。
- 幻想曲集(op.116)
- 3つの間奏曲(op.117)
- 6つの小品(op.118)
- 4つの小品(op.119)
幻想曲集(op.116)。全7曲から構成されており、3つの奇想曲(第1曲、第3曲、第7曲)と、4つの間奏曲(第2曲、第4〜6曲)から成る。私は中でも、情熱的で技巧的な第3曲、第7曲が好きだ。
3つの間奏曲(op.117)。地味な曲が多いブラームスのピアノ曲の中でもとくに地味な曲。しかし蔭のある美しさがすばらしいと思う。全体的に穏健で回顧的だ。過ぎ去った美しい日々を回想するような、慈しみに満ちた曲ばかり。
6つの小品(op.118)は、第2曲「間奏曲」が最もよく知られている。この曲は、ブラームスが書いた曲全体の中でも、最も美しい旋律だと思う。情熱的な第3曲「バラード」も好きだ。第6曲は圧倒的にすごい。
4つの小品(op.119)はブラームスが書いた最後のピアノ曲。回顧的で、しみじみとした詩情が特徴的だ。
エレーヌ・グリモーのピアノは瑞々しくて、雄弁だ。大家が過去を振り返るのではなく、これからというピアニストが取り組んだブラームスは一味もふた味も違う。枯れた花に水をやるように、献身的で、生命力にあふれた曲を聴かせてくれる。
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