USHINABE SQUARE

クラシック名盤・名曲と消費 生活 趣味

大フィル・朝比奈隆生誕100年記念特別演奏会


7月9日は、大フィルの創設者の一人にして前音楽監督でもあった故・朝比奈隆氏の100回目の誕生日にあたる。2008年はカラヤンイヤーにあたるが(生誕100年)、大阪の巨匠のメモリアルイヤーでもあった。スタイルも音楽もまったく異なるこの二人の指揮者が同じ年生まれだったなんて。


朝比奈隆生誕100年記念特別演奏会』と銘打たれた、大フィルの演奏会に行ってきた。指揮者はもちろん、現・音楽監督大植英次さんだ。

朝比奈隆生誕100年記念特別演奏会
大阪フィルハーモニー交響楽団

2008年7月9日(水) ザ・シンフォニーホール


指揮:大植英次
独奏:伊藤恵(ピアノ)※
プログラム:
モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番イ長調(K.488)※
<アンコール>
モーツァルトピアノソナタ(K.545)より第一楽章
〜休憩〜
ブルックナー交響曲第9番ニ短調


http://www.osaka-phil.com/dbimages/20080709.jpg
(↑画像は大阪フィルのHPより)


オーケストラの配置は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが両翼に構える対向配置で、ブルックナーでは8人のコントラバス奏者が奥に並ぶ特殊な編成。大植さんの指揮はすべて暗譜だった。


モーツァルト。こってりとしたオーケストラの音色が良い。伊藤恵さんのピアノは終始安定していて、音色は柔らかく、豊かで繊細な表現力があった。親密でくつろいだ雰囲気だった。好感の持てる名演だった。


ブルックナーの9番。未完の大作。8番と並んで巨大な作品で、ブルックナーの最高傑作に挙げる人も多い。


私はこの曲にどう接すれば良いのか決めかねている。親しみやすさは皆無で、日常的には聴くにはあまりにも非日常的で、登れない崖のように、非常に厳しい曲だと思う。ただ呆然と見上げるしかない、という感じを持っている。


しかし今夜の演奏では、改めて、すごい曲だと思った。実に霊感に満ちたステージを見せてくれた。


第1楽章。陶酔的。暗雲の立ち込める荒野に太陽の光が一筋差すような感じ。第2楽章。殺伐とした光景。暴力的だとさえいえる、戦慄の音楽。とても恐ろしい音楽だと思う。第3楽章。アダージョ。「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲のように官能的な音楽だが、それよりずっと素朴でゴツゴツしている。


大植さんとブルックナーの相性は必ずしも良いとは思わないが、いまの状況で出せる力のベストに近い出来だったと思う。オーケストラにおける演奏史の重みを感じた。指揮者は全身全霊で振り、オーケストラは渾身の演奏でこたえた。


私は朝比奈時代の大フィルをよく知らないのが、知っている人の思い入れはもっと深いのかも知れない。「朝比奈隆生誕100年記念」というのが指揮者とオーケストラ、そして観客に力を与えたのだと思った。


大植さんが、演奏終了後の熱狂的な拍手の中、指揮台に飾られた朝比奈隆氏の写真に向かって、深々と頭を下げていたのがとても印象的だった。


(↓面白かったらブログランキングに応援のクリックよろしくお願いします。)
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 クラシックブログへにほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へにほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ