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『新版 クラシックCDの名盤』(宇野功芳、中野雄、福島章恭・著)


宇野功芳、中野雄、福島章恭の3氏による『クラシックCDの名盤』(文春新書)の改訂版が発売された。


「増刷を重ねて17刷。姉妹本である『演奏家篇』(これも9刷!)を加えると刷り部数は10万部を遥かに超えている。もしかしたら、クラシック音楽に関する書物では空前の数字を記録しているのかもしれない」*1


新書なので気軽に買えることもあって、クラシック音楽ファンだけでなく、持っている人はかなり多いのではないだろうか。


私も、旧版は、CD購入の参考にしたものだった。本の小口が黒く汚れるくらいに愛読し、寝る前、トイレなど暇な時間にはパラパラとページをめくり、未知の演奏を想像し、目で音楽を楽しんだものだった。


しかし、クラシック音楽を聴けば聴くほど、この本から遠ざかっていった。名曲案内としては重宝するが、名盤案内としては著しく偏っているように思えてきたからだ。


音質の軽視(古い録音の紹介が多いので音質が悪いCDが多い)、巨匠を絶賛、日本人指揮者への低評価、若手〜中堅指揮者への言及が少ない、廃盤のCDが挙げられている、など本書には問題点がたくさんあった。


最大の問題は、3人の選者の好みが、似た傾向を持っている点で、多種多様な演奏が紹介されていない点だ。


新版 クラシックCDの名盤 (文春新書)

新版 クラシックCDの名盤 (文春新書)


その傾向は改訂版でも全く変わっていないし(選定盤の多少の変更はある)、問題もそのままだ。しかし、懲りずに購入してしまった。


追加要素はある。


作曲家では、モンテヴェルディプッチーニビゼーエルガープロコフィエフ武満徹などが加わった。


楽曲としては、メンデルスゾーン交響曲第4番「イタリア」、ヴェルディのオペラ「椿姫」、チャイコフスキー交響曲第4番、マーラー交響曲第7番「夜の歌」、ショスタコーヴィチ交響曲第4・7「レニングラード」・8・9・10・15番などが追加された。


ページ数も、374ページから470ページに増えた。価格も本体価格1,100円に跳ね上がった。


あいかわらず、問題はあるのに読んでしまう。つまらなかったらこうならない。痛快な部分もある。あいかわらず、主義と主張に満ちている。押し付けがましい、と感じるほどでもある。


本書は、たぶん啓蒙書なのだと思った。そう考えると腹立たしくならない。名盤紹介という客観的なものではなく、著者陣が自分の美学を熱く語る、クラシック音楽の啓蒙の書なのだと思った。


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*1:中野雄氏によるまえがきより引用