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モーツァルトのレクイエム


よく、フォーレ(通称:フォーレク)、ヴェルディ(ヴェルレク)のレクイエムと並んでモーツァルトのレクイエム(モツレク)を三大レクイエムと呼ばれるが、この中で私が一番好きなのは、モーツァルトのレクイエムだ。


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映画『アマデウス』で、仮面を被り黒装束に身を包んだ謎の人物が、病床にあったモーツァルトのもとを訪れ、「レクイエムを書いてほしい」と依頼する。


その人物は、モーツァルトの才能を妬み、様々に進路を妨害してきた宮廷作曲家のアントニオ・サリエリだった。サリエリモーツァルトを死に追い込もうとしていたのだった。


すでに死期が近いことを予感していたモーツァルトは、その不吉な人物を死神と思い込む。そして悟る。「このレクイエムは自分の葬送のためのものだ。」


モーツァルトは、妻のコンスタンツェが止めるのも聞かず、作曲に没頭する。結果的にこの無理がモーツァルトの寿命を縮めることになった。作品も未完の状態で残され、現在は弟子のジュスマイヤーが補筆した形などによって聴かれている。


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サリエリモーツァルトを毒殺したという噂があるぐらいだが、上記のエピソードも史実はとても怪しい。おそらくフィクションだろう。しかしこうしたエピソードは作品に対するイメージを決定的なものにする。


さまざまな快活な曲で人を楽しませてきたモーツァルトが、自分だけのために書いた作品。


モーツァルトのレクイエムは、自分の内面を見つめた、癒しの音楽だと思う。クラリネット協奏曲のような明るく愉しいモーツァルトではないが、これもモーツァルト作品としか言いようのない霊感に満ちている。


レクイエムなので常日頃からよく聴くというわけではないが、時々聴く。例えばザワザワした心理状態の時などは、心の水面が落ち着き、神妙で静かな気持ちとなる。癒しの効果がある曲だと思っている。


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ベームウィーン・フィル

モーツァルト:レクイエム

モーツァルト:レクイエム

ベームモーツァルトを得意としてきた。そんなベームの代表的な録音でもあって、昔から名盤と言われてきた。オペラ的は優雅さがある。テンポはゆったりながらも、全体から緊張感がみなぎる。渾身の指揮から生み出される、荘厳でありがたみのある演奏。ただ、現在の耳で聞くと、もっと音質に立体感が欲しいのも確か。


ティーレマンミュンヘン・フィル

モーツァルト:レクイエム

モーツァルト:レクイエム

ベーム・スタイルを現代にリバイバルしたような演奏。腰の据わった、重心の低い演奏。弦楽器の低音部と中音部が充実した印象。ただ、指揮者のティーレマンはまだ若いということもあって、色気というか覇気みたいなものが前面に出ている感じ。例えば「怒りの日」はドラマチックで、オペラのよう。聴いてみてとても興味深い、芳醇な演奏だが、レクイエムの演奏とはもっと素朴で枯れていても良いのかもしれないと思った。録音状態はたいへん立体的に感じられて良い。


アーノンクールウィーン・コンツェントゥス・ムジクス

モーツァルト:レクイエム

モーツァルト:レクイエム

ピリオド楽器。楽譜にジュスマイヤー補筆版を採らず、バイアー版を使用。たぶん当時はこんな演奏をしていたんだろうなという印象で、極めて提案性の高いアカデミックな演奏でもある。アーノンクールの音楽づくりは相変わらず荒々しく、調和よりを対比を際立たせる感じ。金官のよさが目立つ。


ヘレヴェッヘシャンゼリゼ

Mozart: Requiem/Philippe Herreweghe

Mozart: Requiem/Philippe Herreweghe

ピリオド楽器。まず、合唱のレベルが圧倒的に高い。素晴らしく揃っていて、透明感がある。独唱もずば抜けている。オーケストラもやり過ぎず引き過ぎず、この曲にピッタリ。ピリオド楽器なのに驚くくらい軽さがなくて、低い音から高い音まで充実している。音質も良い。つまり、すべてがよくて満点に近い。私が一番に気に入っていて、とくに推したいのはこのCD。


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