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交響曲第7番/ゲルギエフの「夜の歌」


ヴァレリーゲルギエフマーラー・チクルスが続々と発売されている。


これは昨年から首席指揮者を務めるロンドン響とのコンビでのプロジェクトで、現在、6番→1番「巨人」→7番「夜の歌」が発売済み。そして近日中に3番の発売を控えている(早いところではもう店頭に並んでいるかもしれない)*1


7番はマーラー交響曲の中でも、もっとも謎が多く、また一般受けしない曲で、演奏にかかる労力も多めなので、生で聴ける機会はそれほど多くない。


「夜の歌」という副題の由来は、第2楽章と第4楽章にある。第3楽章のスケルツォを挟んで、第2楽章と第4楽章に「ナハトムジーク」すなわち「夜の歌」が配置され、全5楽章で、シンメトリカルな構成の交響曲となっている。


曲はまるで夜のような、全体的に暗いムードで第4楽章まで展開されるが、最後は待つのは場違いに明るい終楽章だ。この、終楽章の盛り上がり方は「お祭り騒ぎ」のようで、「暗」から「明」へ、「夜」から「朝」への必然的な展開もない。つまり、いまでいう「説明責任」も微塵もない。だから、「夜の歌?」と、謎を呼ぶもとにもなっていた。


この解釈について、最終楽章は「朝」だとか、「天国」だとか、「天国的な幸せ」だとか、いろいろな説があるらしい。


Mahler: Symphony, No. 7

Mahler: Symphony, No. 7


この曲はそもそも「夜の歌」というタイトルで呼ばれるところから間違いが始まっていたのかもしれないなと思った。


陰鬱な第1楽章と開放的な第5楽章のコントラスト。印象薄いが重要な第3楽章。接続詞のような「夜の歌」。マーラーの7番とは、前から後ろに解釈するのではなく、俯瞰して楽しむ音楽かもしれない。メロディやオーケストレーションは大変に魅惑的な曲だ。副題がなければ案外、とっつきは悪いが聴くほどに魅力的な作品として、素直に楽しめたのではないだろうか。


さて、ゲルギエフがそんなことを思っているかは別にして、この7番は大変にわかりやすい。問題作「夜の歌」がこんなにわかりやすくてよいのかと思うほどだ。


全体的に、「快速」と例えてよいくらいの速いテンポで駆け抜ける。ゲルギエフは激しい音楽づくりを特徴とする燃焼系の指揮者だが、マーラーではチャイコフスキーとは違い、節度を保っていて崩れない。たとえば、第2楽章の「夜の歌」では上質な絹のような響きによって、ミステリアスな面を見せる。第4楽章の「夜の歌」では室内楽的な明晰さが光る。ギターの音もしっかり聴こえる。熱さばかりでなく、多彩な表現力をもつ指揮者なのだと思った。


例えるなら、いままでの演奏史は難解そうなものをさも難解そうに演奏していたのを、ゲルギエフによるマーラーの7番は、わかりやすいものだけ取り出して、それをわかりやすく演奏したという感じだ。


しかし問題作「夜の歌」が本当にこれで良いのかと言われるとなかなか答えに困る。複雑でわかりにくい演奏に惹かれる時もあるのが事実である。


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*1:2008年9月24日現在