京都・西洋膳所おくむら
読んでいただいている読者の方がもし京都に旅行されることがあれば、やや不便な場所にあるのだが、是非、行かれてみることをお勧めしたい店がある。
それが「西洋膳所おくむら」で、京都の一乗寺にある、シェフの奥村氏によるフランス料理店である。祇園には息子さんがやっている「祇園おくむら」もある。
特徴は、「京懐石の要素を取り入れたフレンチ」で、コースの中には懐石そのもののような品もある。
私はいままで、この店以上の味に出会ったことがない。ジャンルを問わず、いままで食べた中で一番おいしかった店と問われると、迷わず「西洋膳所おくむら」を挙げる。店に行く前と行った後で、価値観が変わってしまった。
料理はコース料理のみで、昼は5,000円〜10,000円、夜は10,000円〜30,000円のコースとなる。
ちょっと高級な店なのだが、何かのお祝いの時や、京都旅行の記念などには、とてもふさわしい店だと思う。
以下の写真は、過去に行った時に撮ったものなのだが、いま思い出しても自然に顔がほころんで、幸せに思うくらいだ。
◇ ◇ ◇
先日、京都に一泊したときに「おくむら」に行ってきた。
【「西洋膳所おくむら」ある日のランチコース】
ヤリイカとキャビアの冷製パスタ
季節の前菜の盛り合わせ
オマールエビと梨のムースのサラダ
鱧と松茸と擦りレンコンの吸い物
鯛とカブと枝豆と石榴と葡萄のカルパッチョ
ヤリイカとアワビの石焼
季節の野菜の温かいスープ
アマダイのパイ包み
和牛ヒレステーキ
ライス/パン/一口カレーのうちのどれか
季節の果物のヨーグルトアイス添え
4種のケーキ(桃のケーキ、ガトーショコラなど)
コーヒー
フルーツを使った料理も不自然でなく、見た目にも美しかった。
フレンチでの松茸なんて珍しいのだが、これは懐石そのものといった感じ。
ヤリイカとアワビは軽く炙って、ソースにつけて食べる。このソースが例えようのない複雑な旨みのソースだった。アワビとは何とも贅沢だ。
メインの和牛ヒレステーキは前回と同じ。肉は霜降りではなく赤身なのだが、どうやったらこんなに柔らかくできるものなのか。
ライスかパンではなく、私は一口カレーをチョイス。一口カレーは最後に出てきた。これがまた上品なカレーで、私はロイヤルコペンハーゲンの器に盛られたカレーを初めて見た。いかにも洋食屋のカレーという感じで、具は全部ソースに溶けているような、深みのある味だった。やや、難を言えば、最後のカレーの味の主張が強いため、せっかくのそれまでの料理の繊細な後味が崩れるような印象を持った。そこだけが今回、残念だったところ。でもライスかパンにすれば解決する。
ともかく、今回も期待は裏切られなかった。納得の味だった。
さらに「おくむら」で光るのは接客態度や雰囲気で、こちらも二重丸。どこからともなく料理が運ばれ、全く厨房を意識することがない。皿を重ねる音とか、不要な物音がしない。それでいて熱いものは熱く、冷たいものは冷たい状態でサーブされ、ぬかりはない。
不必要なものを見せないということは、日常を意識させないということで、非日常的な時間を心底からリラックスできる。とても心地よく、まるで郊外のお屋敷にお呼ばれしたような感覚でリラックスして、食事を楽しんだ。
味、器、サービス、雰囲気、すべて満点。
気を配っているということを感じさせないことも気配りだと思う。
私がミシュランの調査員だったら迷わず三ツ星をつけたい。
【西洋膳所おくむら・一乗寺本店】
京都市左京区一乗寺谷田町3
定休日 月曜日(祝日の場合は営業)