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マルク・ミンコフスキの幻想交響曲


先日の「イタリアのハロルド」に続いて、今日もベルリオーズについて。


マルク・ミンコフスキによる「幻想交響曲」を聴いている。


ミンコフスキの録音については、過去にモーツァルト交響曲第40番と41番「ジュピター」で触れたことがある(→その内容についてはこちら)。


とくに「ジュピター」が傑出して素晴らしく、すっきりした響きと軽快なテンポで、最近の同曲の録音の中では私が最も好きな演奏となっている。いやいや、「最近の」という注釈抜きに、ベストに近い名盤とさえ言えるかも知れない。


さて、ロマン派の作曲家・ベルリオーズではどうか。


Berlioz: Symphonie fantastique - Herminie

Berlioz: Symphonie fantastique - Herminie


オーケストラはレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルとマーラー室内管との共演。レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルは古楽器団体だが、アプローチとしては古楽器のあっさりとした響きを、モダン・オーケストラであるマーラー室内管に注入したような、折衷的なスタイル。

「これはどうしたことか、ミンコフスキの壮大なる実証、古楽オケとモダン・オケの合体という企画。組織体としてのオーケストラを構成する楽器の転換期真っ最中にあったベルリオーズの時代には、各種・各様の楽器が混在していたという主張に基づいての才人ミンコフスキの新提案は、この録音を聴くかぎりは諸手を上げての大喝采だ。」「Amazon内の『CDジャーナル・レビュー』より引用


要するに、「オリジナル楽器かモダン楽器か」というニ択ではなく、混成オーケストラで、歴史に忠実な演奏スタイルをとった。


特徴としては、残響が多めに録られ、軽さは感じない。第1楽章から、全体的に細い響きではあるが、立体的に音楽が構築されていることがわかる。装飾は簡素だが、骨格は骨太だ。スピード感もある。そうかと思うと、第3楽章などでは、テンポを落とし、たっぷりと時間をかけて演奏されている。第4楽章などは非常に小気味よい。第5楽章も小ぶりで繊細ではあるが、しっかりと熱がこもっている。そして、熱狂的に、十分な盛り上がりとともに幕を閉じる。


ミンコフスキの音楽づくりは、過度にアカデミックな匂いを感じさせないところも私が好きな点の一つで、まず演奏としてリラックスして楽しめる点が「ジュピター」の時と共通する良い点だ。


不満があるとすると第2楽章で、19世紀の舞踏会に迷い込んだような優雅な演奏か、そわそわとした、焦燥感を掻き立てられるような官能的な演奏が私は好みだ。だから、このスタイルには限界を感じてしまう。


結局、ミンコフスキは、古典派のモーツァルトでは抜群の相性の良さを見せたのだが、ロマン派・ベルリオーズの巨大な音楽を、このオーケストラが受け止められるかどうかということなのだが、分が悪い部分を感じないでもない。シカゴ響やフランスのオケの豊穣な演奏を聴いた後では、満腹感で満たされるのだが、そこまでの満腹感はない。


ただし、満腹がいつもよいとは限らない。食べ過ぎると時に胃もたれを起こす。ミンコフスキの幻想交響曲は、お腹いっぱいにはならないが、腹八分目くらいの快さがある。何より、すっきりとした響きはこのCD独特のものだ。私はすっきり系の演奏が嫌いではないので、時々取り出してみては聴いている。


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