ラファウ・ブレハッチのリサイタル・アルバム
最近は仕事もプライベートもバタバタと慌ただしく、ブログを更新することができなかった。それでも毎日200アクセスぐらいのページビューがあって、趣味のブログであるにもかかわらずそれだけ読んでいただけるというのは、ありがたい限りだ。初めての方は「クラシック」、「名盤」、「名曲」、「大フィル」などのキーワードで検索して、訪問していただいているようだ。
ちなみにgoogleで「クラシック 名盤」で検索すると、拙ブログが1ページ目に表示されるので(2008年10月25日現在)、今後も励みに書いていきたいと思う(しばらく前にさぬきうどんに凝っていた時には「さぬきうどん クラシック」で検索すると1ページ目のなんと最初に表示されるという、果たしてニーズがあるのかどうか微妙な結果だった)。
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今週、聴いていた音楽は、全体的に、ピアノ曲が多かった。前回触れたポリーニの新譜も相変わらず聴いている。長い交響曲を聴く時間と余裕がない。
最近よく聴いているのが、ラファウ・ブレハッチのリサイタル・アルバムだ。これがとてもよく気持ちにフィットする。
- アーティスト: ブレハッチ(ラファウ),ドビュッシー,シマノフスキ,シューマン,ショパン,リスト
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2005/10/21
- メディア: CD
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本盤は、ラファウ・ブレハッチが2005年のショパン国際ピアノコンクールに優勝した同年発売のデビュー・アルバムということなので、きっと録音は受賞前だろう。
ラファウ・ブレハッチ(ピアノ)
『英雄ポロネーズ〜ピアノ・リサイタル』
▽シューマン:ピアノ・ソナタ第2番ト短調(op.22)
▽リスト:3つの演奏会用練習曲
「森のささやき」・「軽やかさ」・「小人の踊り」
▽ドビュッシー:ベルガマスク組曲
「前奏曲」・「メヌエット」・「月の光」・「パスピエ」
▽シマノフスキ:主題と変奏曲変ロ短調(op.3)
▽ショパン:「英雄」ポロネーズ第6番変イ長調(op.53)
サブタイトルにショパンの「英雄ポロネーズ」とあるが、ショパンのプログラムは最後の一曲のみで、他の作曲家の楽曲がメインになっている。ブレハッチによるショパン以外の演奏を聴きたい人にお勧めしたい。
全体的には、ドビュッシーとシマノフスキの演奏が白眉。しかし、これだけ特徴的な作曲家の楽曲をそれぞれ見事に弾き分けているというのがすごい。
シューマンでは重さがある。タッチはきわめて繊細で、シューマンの渦巻く複雑な思いがゴチャつかずに表現されている。
リストは多彩。極上の技巧が存分に発揮されている。
ドビュッシーのベルガマスク組曲は最高。洗練された、上質なドビュッシーで、印象派風にぼんやりとした部分と、鮮やかで輪郭のはっきりした部分のバランスが絶妙。壊れやすそうだとか、神経質な印象を与えないのも見事だ。名曲「月の光」を聴くと、夢か幻のような不確かな気持ちになる。
シマノフスキの主題と変奏曲(op.3)は、初期の作品だけあって、現代音楽というよりは、ショパンにも共通するような抒情性がある。閃きも構成感もたっぷりでとても満足する。同じポーランドの作曲家なので、ショパンと同様にラファウ・ブレハッチにとってはお国もの。大切な作品のはずだ。
英雄ポロネーズはスタンダードな名演で、何の注文もない。矛盾するが敢えて言えば「至高の中庸」といった感じ。この曲が、プログラムを全部終えた後のアンコールの一曲だったりすると、拍手が鳴りやまずなかなか帰れない。最高のリサイタルだったということになる。
…と、ベタ褒めになってしまったが、ラファウ・ブレハッチは私がいま最も好きなピアニストなので、思い入れが強いからかもしれない。
上質な絹のような柔らかいタッチから生まれる音色は何とも言えない美しさ。燻し銀のような、玄人好みしそうな演奏。ラファウ・ブレハッチが、この時点ですでに完成されたピアニストだったということがよくわかるCDだと思う。