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ベルリン・フィル&サイモン・ラトルの大阪公演


プラハブダペストの旅行から帰ってきて、その余韻に浸る間もなく、今日はサイモン・ラトルが振る、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(以下、ベルリン・フィル)の大阪公演に足を運んだ。


旅行についてはもう少し日程を長く取ってもよかったのだが、ベルリン・フィルのチケットはなにしろ大枚はたいて買ったので、それに合わせて帰ってきたのだった。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団・大阪公演
サイモン・ラトル指揮


2008年11月27日土)14:00

ザ・シンフォニーホール


指揮:サイモン・ラトル
管弦楽ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
独唱:マグダレナ・コジェナー(メゾ・ソプラノ)※
曲目:
ハイドン交響曲第92番ト長調「オックスフォード」(Hob.I.92)
マーラー:リュッケルトの詩による5つの歌※
ベートーヴェン交響曲第6番ヘ長調「田園」(作品68)


さすが現代のクラシック音楽界をリードしている指揮者とオーケストラだけあって、聴きどころ満載の演奏会だった。


オーケストラの音に対する印象は、過去にCDでさんざん聴いてきたカラヤン時代とも、アバド時代とも異なっていた。重厚でもなく、すっきり明快というわけでもない。リズムの刻みは恐ろしいほど正確で、機動力抜群。音が素晴らしく揃っていて、鮮烈に鳴る。音色はどちらかといえば生真面目ではあるが、よけいな装飾がない鮮やかさ。出てくる音楽は新しい解釈と提案に満ちていて、すべての曲が初めて聴く曲のようだった。表現意欲にあふれた集団。そんな印象を受けた。


まずはハイドンの92番「オックスフォード」。第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、第一ヴァイオリンの横にチェロ、その奥にコントラバス。チェロの反対側、すなわち第二ヴァイオリンの右にヴィオラハイドン交響曲の、機知に富んだ軽妙さ、洒落たところ、前衛的な部分、オーケストレーションの巧さなどが、素晴らしい精度で再現されていく。このハイドンと、後半のベートーヴェンでは指揮は暗譜だった。棒は非常に明快でわかりやすい。ステップを踏むように、指揮台の上で前後左右に軽やかに動く。


マーラーのリュッケルトの詩による5つの歌。ラトルとベルリン・フィルのコンビは、CDで聴いてもマーラーととても相性が良いが、その片鱗が実演でもうかがうことができた。とはいえ、この曲では、マグダレナ・コジェナーの歌声に尽きる。憂いとも愁いとも形容したくなるような気品のある歌声で、とても良かった。


ベートーヴェンの「田園」。実際に自然の中に立って、鳥の歌声や木々のざわめきが聞こえてくるような、きわめてリアリティのある「田園」だった。木管の美しさと正確さはとくに際立っていた。ホルンも金管も文句なし。並はずれた名人集団だ。第一楽章を聴いている時には、変奏風に再現される主題がとても鮮やかで、この曲は第五「運命」と兄弟に近い関係の曲なんだと改めて思った。第二楽章は弱音が美しく、ほれぼれとするような柔軟さだった。聴き浸った。第五楽章は、ビブラートを抑えた第一ヴァイオリンと、ビブラートを効かせた第二ヴァイオリンによる掛け合いによって見える対比が見事で、対向配置の強みが効いていた。ちなみにオーケストラの配置は、マーラー以降のプログラムでは、チェロとヴィオラの位置が入れ替わり、コントラバスも右奥に移った。


「S席で40,000円」のチケット価格はあまりに高価で、そこまでの価値があったと聞かれると!???で、これは人気指揮者とオケの限定価格みたいなものだとして、実際は28,000円ぐらいが妥当なのかもしれないが、演奏自体は素晴らしいものだった。十分納得できる演奏だったと思う。


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