大植英次&大フィル・第九シンフォニーの夕べ
今日から仕事も休みで、夕方、第九の演奏会に、大阪の中之島のフェスティバルホールに行ってきた。
今夜の会場のフェスティバルホールは1958年に開館した歴史のあるホールだが、来年以降の解体と建て替えが予定されていて、2008年の12月いっぱいで長い長い休止期間に入る。12月のプログラムは今日が最後なので、すなわち、今夜の演奏会を最後に、フェスティバルホールとしては一先ず幕を閉じることになる。
現在の大フィルの定期演奏会の会場は大阪の福島にあるシンフォニーホールだが、フェスティバルホールは、故・朝比奈隆音楽監督の時代の定期演奏会の会場であり、最先端の音楽ホールとして来日オーケストラを迎えたこともたいへん多かった。いわば大阪におけるクラシック音楽の発展を見守ってきたホールで、往年の思い出を抱いて訪れたファンも多かったと思う。会場は、普段と違った熱気に包まれていた。
(↑画像はフェスティバルホールのHPより)
大植英次指揮「第9シンフォニーの夕べ」
指揮:大植英次
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
独唱:(ソプラノ)スザンネ・ベルンハート/(アルト)スザンネ・シェファー、
(テノール)トマス・クーリー/(バリトン)サイモン・カークブライド
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団
プログラム:
▽ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調「合唱付き」作品125
〜アンコール〜
▽エルガー:行進曲「威風堂々」より
オーケストラの編成は、左から、第一ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第二ヴァイオリンで、コントラバスはチェロの左奥。第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが左右に分かれる、対向配置。
指揮棒は終始持たず、さらに暗譜による指揮だった。
フェスティバルホールはシンフォニーホールと比べると広いホールなので、ホールを鳴らすというふうにはならず音量は今一歩という感じだったが(席もそれほど良い席ではなかった)、演奏自体はじゅうぶん満足できるものだった。
第1楽章と第2楽章は盤石で、伝統的な大フィルらしさを存分に感じさせる、熱く力強い演奏だったし、逆に第3楽章での繊細な表現などは、大植&大フィルが辿り着いた境地と思えるくらい洗練されていて、とても良かった。個々のパートでいえば、第一ヴァイオリンをはじめとする弦の音色や響きは、世界のどこに出しても恥ずかしくないほどだと思った。木管群も信頼性が高く、正確だった。ティンパニも絶妙の叩き方でテンポ抜群だった。
そして、第4楽章の迫力は、CDなどではどうやっても実演にかなわない。それまでおとなしく聴いていても合唱が入ってくるとなかなか冷静さを保てなくなる。やっぱりものすごい音楽だ。ベートーヴェンは何と凄い曲を書いたものだといつも思う。これが懲りずに毎年毎年第九を聴きに行ってしまう理由で、これだけの感動は家にいるとなかなか味わえない。
細かい部分を挙げるとミスもあったが、今年の最後の演奏会ということと、フェスティバルホール最後の演奏会ということで、指揮者とオーケストラの集中力は尋常でなく(演奏中、会場も水を打ったように静かだった)、メモリアルにふさわしい演奏だった。