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サイトウキネン・オーケストラの「田園」


日本のオーケストラのなかで、ヨーロッパの一流オーケストラと比べても遜色ない実力と人気を持っているのは、サイトウ・キネン・オーケストラくらいではないだろうか。


と(不勉強にもかかわらず)、いきなり断言してしまうと方々から石が飛んできそうだが、成り立ち、実力、そしてチケット入手の難しさから言って、もっとも「ありがたい」オーケストラとして、真っ先に頭に浮かぶ。


N響や、読響や、オーケストラアンサンブル金沢や、大フィルだって、立派なオーケストラだと思うが、サイトウ・キネン・オーケストラには、常駐のプロオーケストラにない希少価値がある。オーケストラ・国別対抗戦みたいなものがあるとしたら、好き嫌いは別として、サイトウキネンを日本代表として出しておけば万人の一致が図れそうだ。また、あっけなく敗退したときでも、「サイトウキネンで負けたらしようがないか」と、さまざまな部署の責任が問われないで済みそうである。


周知の通りサイトウキネン・オーケストラは、夏の音楽祭のための特別オーケストラで、故・斎藤秀雄氏に師事した音楽家が中心となって、いまから15年以上前に結成された。毎年夏の長野県松本市でのサイトウ・キネン・フェスティバルが恒例の行事で、今年も間もなく開催される。


家から遠いのと、気合いを入れないとチケットが手に入らないので、私は最初から諦めて、家でCDを聴いている。取り出してきたCDは、小澤征爾さんが振る、ベートーヴェン交響曲第6番「田園」だ。



この「田園」は、なめらかで、モダンでスマートで、「やや薄味」が耳に心地よい。飽きずに繰り返し聴くことのできる演奏となっている。弦のアンサンブルの精度は恐ろしく高く、音色もたいへんに雄弁だ。木管も、フレーズ中感心しきりなほど巧い。第2楽章などは渾身の集中力で、油断すると、ウィーンフィルが演奏しているように思えてくる。


ベートーヴェンの「田園」は、明るい曲調とは裏腹に、第五「運命」に負けないくらい緻密な構成をもつ作品で、どこもイジりようがない傑作で、演奏によっては私も聴き疲れしてしまうこともあるのだが、このCDには適度な「ゆるさ」があって、疲れないし、胃もたれもしない。でも小澤さんらしいガツガツした部分もしっかり出ているので、飽きさせない。


この演奏の長所は、ガチガチにコントロールしないで要所だけを締める音楽づくりが生き生きとした躍動感を生んでいる点だと思う。夏には、このような爽やかさが捨てがたい。


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