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ボストン美術館展 in 京都市美術館


先日、平日が日曜出勤の代休だったので、京都まで足を延ばして、京都市美術館で開催されているボストン美術館展に行ってきた。



ここ数カ月、平日の休みができるとちょうどそのときに子供が風邪をひいてどこにも出られなくなって休みがつぶれたり、また子供が元気で保育園に預けられるときには私が体調を崩して休みが台無しになるというサイクルを何回も繰り返していたので、「さて今回の休みはどうなるか」と怯えていたのだが、その日は子供も私も元気で、子供を無事に保育園に預けることができた。久しぶりの休日。そこで、一路、高速を飛ばして京都に向かったのだった。


◇  ◇  ◇


私の家からだと第二京阪が便利で、平日ということもあって道がガラガラに空いていて、家のドアから美術館のドアまで2時間かからなかった。意外に近いことに驚いた。しかし、美術館は、平日なので油断していたら、かなりの混雑だった。夏休みに入って最初の週ということもあるのだろうが、年配の人も多かった。やはり京都は年中を通して観光客の足が絶えない観光地だと認識した。


http://www.e-tix.jp/boston/img/header.jpg*1


一言で言うと、「この夏、京都で名画のフルコースを」というチラシの宣伝コピーの通り、フルコースを食べた後のように、満腹感のある展覧会だった。


この展覧会では、ボストン美術館が誇るヨーロッパの絵画の膨大なコレクションは、地域別や年代順にではなく、次の8つのテーマで構成されている。

1 多彩なる肖像画
2 宗教画の運命
3 オランダの室内
4 描かれた日常生活
5 風景画の系譜
6 モネの冒険
7 印象派の風景


普通は「スペイン絵画」とか「フランドル絵画」とか「印象派」などと分かれているはずだが、「1 多彩なる肖像画」では、例えばベラスケスとマネの肖像画が並んで飾ってあったり、「5 風景画の系譜」では、イギリス絵画もイタリア絵画もフランドル絵画も印象派も同じコーナーにあったりと、歴史を超越したテーマ別展示となっている。こういう展示は、美術史に詳しくない人でも楽しめるし、逆に美術史に詳しい人は、ギャップを楽しんだり、作風の違いからその隙間を想像したりと、違った見方もできるので、つまりどちらも楽しいと思う。


ボストン美術館のモネ・コレクションは世界的にも知られていて、この特別展では、モネ作品はそれぞれのコーナーで小出しされるように登場する。それが、最後から2番目の「6 モネの冒険」でダメ押しのように10点も展示されている。この流れがすごかった。また、「モネの部屋」は混雑もすごかった。


あとは何と言っても個人的には、ゴッホの『オーヴェールの家々』が白眉だった。すべての線が生きているようにうねっていて激しい。鮮やかな色が目に飛び込んでくる。全ての色と線が、他の誰でもないゴッホの筆によるものであることを強く主張している。たったいまパレットからキャンバスに塗られたかのような鮮烈さで、まったく色あせていない。この色は印刷では出ない色だ。この絵を観るためにここまできたと言っても言い過ぎではないと思った。絵の前で、しばらく立ちつくした。


http://www.asahi.com/boston/intro/images/7-2.jpg*2


ともかく、難しいことは抜きにして、名画をしっかりとたくさん楽しめる展覧会だった。「名画ばかりの特別展で何が悪い」という、開き直りみたいなものも感じさせる余裕の名画展だった。きっと欧米の巨大な美術館を何時間も何日もかけて分類別に見ていく方が楽しいが、「フルコース」という名の通り、日本で、限られた時間で見ようと思ったら、このようなメニューの特別展は正しい選択だと思う。


◇  ◇  ◇


あと、せっかく京都に来たので、京都らしものを食べて帰ろうと思って行ったのが、「いもぼう」だった。「いもぼう」とは、えびいもと棒鱈を炊き合わせた料理で、円山公園の中にある日本料理店「いもぼう平野家本店」がよく知られている。



私は学生の時に京都に住んでいたが、この店を訪れるのは今回が初めて。いもぼうも初めて。若い時に好んで食べる料理ではなかったし、なにより学生には高価だった。



これが「いもぼう御膳」。2,520円。「名物にうまいものなし」という言葉がある。さらに、注文してから3分で料理が出てたのでいっそう警戒した。だが、普通においしかった。えびいもは柔らかいのに崩れていないところが見事だし、それほど濃い味付けでもないのにダシの味がしっかりしているところがさすがの京料理だった。棒鱈はにしんそばに入っている鰊(にしん)のように、基本的には淡白なのだが旨みが凝縮されていて、ご飯が進んだ。中央上の小鉢は「ぎをんどうふ」。単なる、あんかけ入りの豆腐であるが、京都、祇園と言われたらそれだけで価値がありそうだ。なんといっても「ぎをん」である。


正直、それほど期待はしていなかった。今後も「わ〜い、いもぼうだ〜」と楽しみにするほどおいしいかと言われるとそこまでではないが、食べてみてよかった。京都に行ってやってみたいことベスト30があるとすれば、私の中で「いもぼうを食べる」はその30位までには入っている。限られた休日、限られた時間でそのことができた。行ってみてよかった。


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*1:画像はasahi.comより

*2:同上