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ラファウ・ブレハッチのショパン・コンクール・ライブ


ラファウ・ブレハッチのライブ録音のCDを聴いている。ブレハッチが2005年にショパン国際ピアノコンクールを制した時のライブ録音には、前奏曲ノクターンなどが収録された「パート1」と、ピアノソナタとピアノ協奏曲第1番が収録された「パート2」がある。今回は、その「パート2」について、中でもピアノ協奏曲第1番について書いてみたい。


■パート1

ラファウ・ブレハッチI

ラファウ・ブレハッチI

■パート2

ラファウ・ブレハッチII

ラファウ・ブレハッチII


このCDで興味深いのは、最初いかにもルーチンワークで事務的に演奏していたオーケストラが、次第に熱を帯び、最後は驚くべき集中で、熱狂的なフィナーレを演じるところにある。


ショパンはピアノをオーケストラのように駆使した作曲家だったので、ピアノだけで十分に表現すべきところは表現できていて、ピアノ協奏曲というジャンルではオーケストラが余計に感じてしまう。もちろん演奏にもよるのだろうが、緻密に書かれたピアノパートに比べると、オーケストラパートはかなり平凡で、面白いところが少ない。それはきっと演奏する側にとっても同じで、さらに、コンクールともなれば、よく知らないピアニスト何人もと同じ曲を何度も何度も演奏しなければならない。これは飽きる。仕事と割り切らないとできない。毎回一生懸命演奏しようと思っても無理である。


だから、そんな気持ちが変化するというのは大変なことだ。「これはすごいピアニストかもしれない。」、「この音と技術、とんでもない逸材だ。」ルーチンワークが、最後は、オーケストラのメンバーの興奮が感じられる熱演になってしまう。


拍手のタイミングが早すぎるのも許せる。観客は演奏の終わりを待ち切れずに拍手してしまう。マナーから言うといけないことが起こってしまう。「このピアニストはすごいものを持っている。」、「今回のショパンコンクールは当たりかもしれない。」観客も才能を発見する。


テンポはよどみなく、音色はどこまでも澄んでいて、素朴で素直。足すところもなければ、引くところもない。一言で言うと「スタンダードな演奏」なのだが、この演奏によって得られる気持ちは何なのだろう。燻し銀のような上質な演奏で、「心が満たされる演奏とはこういう演奏のことを言うのか」という感じである。


このCDには、オーケストラが、指揮者が、観客が、驚くべき新しい才能を「発見」し、傑出した演奏に幸福になる様子が収められている。


この優勝のあと、ブレハッチは一躍スターダムになる。リサイタルで聴いた感想から言って、これだけ売れても、このときのスタイルが全く変わらないのは嬉しい。世界が新しい才能を発見した瞬間の記録として、たいへん貴重だ。


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