なんばグランド花月に行ってきた
夏休みを満喫している。今日は、吉本興業の本拠地である『なんばグランド花月』にお笑いのライブと新喜劇を観に行ってきた。
関西に住んでいるのに行ったことがない人が多い2大名所は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)となんばグランド花月(以下、NGK)だと、勝手に私は思っている。事実、私は大阪に何年も住んでいるのにUSJに行ったことがない。NGKも2回目だ。新喜劇については毎週テレビで放送しているのでわざわざ行く必要がないという話もある。
NGKのステージは漫才・落語の部と、新喜劇の部の2部構成で、毎日2〜3公演(土・日などはもっと多い時もある)が行われている。1階席が4,500円で、2階席が4,000円である。
以前、初めて行った時には、内容よりも、パンフレットはおろかチラシ一枚くれないことに驚愕した。白黒のチラシ一枚もらえないんです。向こう側からもらえるものは何一つない。ただでは何もあげないという、無駄を省く、コスト意識がすごかった。
そして対照的に、休憩時間となればまるで甲子園球場のビール売りのように弁当やたこやきを売りにくる。漫才の最中に観客も平気で弁当を食い、芸人も気にせず笑いを取る。大阪ならではの合理的精神と、芸人のたくましさと、会場の混沌とした様子に衝撃を受けた。
今回は、宣伝のチラシ2枚をもらった。あれ、吉本興業も方針が変わったのかな。しかしプログラムは自動的には配られず、ひとつのところにまとめてあるのを客が勝手に持っていく仕組み。
2010年9月29日 なんばグランド花月プログラム
≪漫才・落語≫
キングコング/インパルス/まるむし商店/Wヤング/小泉エリ/大木こだまひびき/月亭八方/中田カウス・ボタン
≪新喜劇≫出演者
内場勝則/安尾信乃助/前田真希/烏川耕一/山本奈臣実/中川貴志/市嶋太喜/森田展義/五十嵐サキ/吉田ヒロ/酒井藍/島田一の介/中田はじめ/清水けんじ/浅香あき恵/新名徹郎/ともえ/Mr.オクレ
やっぱりお笑いでも、クラシック音楽でも、生のステージが一番だと実感する。情報量がけた違いに多いし、送り手と受け手の側のコミュニケーションが存在するからだ。テレビでは視聴者が聴きやすいように音量が調整されているが、生では、芸人の力量が差となってはっきりと出てしまう。この芸人は声が通らない、とか、腹から声が出ている、とか、観客席の反応をよく見て頭を回転させている、などの情報が見えてくる。観客の反応は正直で、声がしっかりと出ていて、姿勢がよく、あとは客席をいじれる、よく練習したと思われる漫才が受ける。また、すべることがあっても拾うことができるかどうかというのは技術の問題であって、この辺りから、お笑いというものは感覚だけではなく、きわめて訓練による職人的な要素が大きいものだと思った。
キングコングはいかにも売れっ子という感じで、オーラがすごく出ていた。だが、ネタは印象に残らなかった。面白くないわけではないが、テーマが悪いという感じだった。インパルスは危ないくらい面白く、笑った。このしつこい笑いはくせになる。今思い出しても吹き出してしまう。月亭八方は、落語家だけあって、一癖もふた癖もある内容の話を素晴らしい力量でまとめて、唸った。う〜む。まるむし商店、Wヤング、大木こだまひびきの3組は、変化の激しい世界で長年生き残ってきた凄味のようなものを感じる舞台だった。テレビで見ると、正直チャンネルを変えてしまうかもしれないが、生では一味違う。計算された笑いに安定感があった。年配のお客さんはこういう漫才で笑っていた。
新喜劇は、偉大なるマンネリの勝利。語尾がおかしい安尾信乃助。アンパンマンねたの中田はじめ。出てきただけで笑いを誘うMr.オクレ。マンネリ以外の何物でもないのに、笑ってしまう。ただ、こうやって改めてみてみると、台本を無視して芸人が勝手にしゃべっている部分が意外に多いのだと知った。受けるアドリブ、外したアドリブ、それを拾う、放置する、などパターンが無数。プロの瞬発力が感じられた。
全部で3時間ほどの長いステージで、かなり笑った。思えば、観客はお金を払って笑いに来ているのであって、それを期待通りに笑わせるのは相当にしんどい仕事だ。今日は、笑いという芸の技術の披露を見て楽しんだ。芸を仕事として選んでいる人たちを率直にすごいと思えた3時間だった。