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明石グルメの旅〜菊水鮓・たこ磯


グルメの旅と書いたものの、グルメと言えるかも怪しいし、旅というほど大層なものでもないんですが…。


今回も単なる食いしん坊日記です。


◇  ◇  ◇


先日、季節外れの夏休みの最後の日(平日)、明石まで出かけた。目的は、プチ贅沢な美味しい昼食を食べることだった。明石で美味しいものとして浮かぶのが「寿司」と「明石焼き」だ。寿司に関して言うと、最近私は時間ができると寿司屋巡りをしている(寿司は高価なので、行きたい店のリストのうちまだほんの少ししか行けていないのだが、ある程度材料が揃ったら書いてみたいと思う)。だから瀬戸内海の豊富な魚が集まる明石で、どんな寿司を食べることができるのか興味があった。また、明石焼きは明石が本場である。


明石も大阪からJRの新快速(他府県の人向けに解説すると、料金は普通電車と同じで停車駅が少ないので重宝する)でたった37分で行けるので、「ちょっと明石まで」みたいな感覚で行ってきた。子供が保育園に行っている間に行って帰って来ることができるのが非常に嬉しい。


■『菊水鮓』


「明石で寿司」といえば、真っ先に名前が挙がるのが、こちら。明治30年創業の『菊水鮓』である。駅から徒歩7分くらいの場所にあって、大通りに面していた。事前に調べた情報によると、格式ある寿司屋とのことなので身構えていたが、店の前には工事の車が止まっていて雰囲気台無し。中に入ると、庶民的とさえ言ってもよいアットホームな感じ。でもガラスのネタケースなどはなくて、綺麗に磨かれたカウンターがあった。どんな魚があるかは聞けばわかるし、魚の保存を考えれば他の方法があるので、ネタケースがない店って好きである。



先客は年配の一組。平日の昼から寿司なんて人はそれほど多くはないからこんなものだろうか。その先客は馴染みの客らしく、ひと通り食べ終わった後、お土産に上巻きを注文していた。馴染みの寿司屋でちょっとぜいたくな昼食を食べた後、お土産に上巻きを作ってもらって帰るなんて、なんというか粋だと思う。先客が帰り、客は私一人だけになった。


こういうタイプの寿司屋では当たり前のように、価格表などは一切ない。つまり、全てが時価。メニューには、盛り合わせとして「おまかせで6,300円〜」、「上にぎりは4,725円」みたいな、いわばセット料金は書かれていたが、どのネタがいくらなどの料金表示はない。このレベルの魚をこのくらい食べたら、会計はこのくらいだろうという、高級寿司屋や老舗寿司屋などで一般的なシステム。


私は「上にぎり」を注文し、足りない分はお好みで握ってもらうことにした。


アブラメ」、「しらさエビ」、「鯛のちりにぎり」、「ウニ(下にイカ)」、「中トロ」、「中トロと胡瓜の巻物」、「蒸し穴子」、赤だし。以上で上にぎり終了。アブラメは関東ではアイナメの方が通りがよい。「ヨッ!さすが瀬戸内海!」という感じで予想通り、白身はかなり美味しいのだが、中トロもなかなかレベルが高い。口に入れた瞬間、溶ける。中トロ独特の食感が健在だ。寿司飯は酸っぱくも塩辛くもなく、ネタの力を生かす脇役に徹している。


まだまだ食べ足りないので、若大将の勧めに従って、「タコ(すだちと塩で)」、「のどぐろ(炙り)」、「穴子(生でも食べられる穴子を軽く炙って塩で)」、「ハマチ(天然)」、「穴子(焼き)」。のどぐろは日本海の高級魚で、じゅうぶんに脂がのっていた。何年か前の冬、雪の降る米子の料理屋を一人で訪れたときに焼いてもらったのどぐろの美味しさを思い出した。穴子は蒸しでも焼きでない、炙りというのを初めて食べたが、これはかなり衝撃だった。プチプチしていてグミみたい!独特な触感で、ものすごい存在感がある。これを明石以外で食べるのは難しいだろうと、ひとり合点した。来てよかった。穴子は焼き穴子もおいしくて、最後を締めるのにふさわしかった。以上で終了。


これだけ食べて支払いは7,000円強。高価だが、納得である。銀座の高価な寿司屋と比べるのは無意味だとしても(相場は20,000〜30,000円?)、そこらへんにある居酒屋で飲み放題にしたら5,000円くらいはすぐにかかってしまう。仕事やどうしても外せない付き合いだったら仕方がない部分もあるが、そんな時は、つまらない酒を飲んだなという荒んだ気分になる。それに対し、一定期間、寿司屋の修業をした、レベルの高い職人がきちんと仕事をして、ひとりの客にこれだけの労力を割いている。その時間、ネタと内容はこの価格に値すると思う。満足度は高い。私は幸せな気持ちで店を出た。


■『たこ磯』


明石では本場の明石焼きも食べてみたかった。昔関西に来て間もない頃には、明石焼きとは「たこ焼きにソースを塗らずに温かいダシにつけて食べる食べ物」だと思っていたが、10年くらい前に初めて明石で明石焼きを食べたとき、その間違いに気付いた。そんな単純なものではなかった。


両者は別の食べ物である。明石焼きは、出し巻き玉子に近い。つなぎの量は少なく、玉子の割合が多い。丸く焼いた玉子焼きをダシにつけて食べる感覚だ。事実、明石では明石焼きと言わず、玉子焼きという。



『たこ磯』は魚の棚商店街にある。この商店街は多くの店でタコやイカ穴子が軒先で売られていて、歩いていると楽しい。しかし私はカメラをぶら提げているのではっきり観光客と分かり、声を掛けまくられた。『たこ磯』は人気店なので、週末や日曜は行列必至だが、この日は混んではいたものの簡単に店に入ることができた。



注文したのは玉子焼き。15個で650円。他のメニューとして穴子入りなどもあった。


仮に毎日食べ続けたなら、たこ焼きはソースの味が強いので人気の瞬間最大風速は強いがきっと飽きる。明石焼きは飽きないのではないかと思う。基本的にはあっさりしていて、ダシの旨みもある。さらには、裏技として、ダシにつけずにソースを塗って食べてもよい(これは知らなかった。『たこ磯』ではテーブルにソースもあった)。勝手な想像で言えば、タコも小麦粉の中に入っているよりは、玉子の中に入ってた方が幸せそうだ。


寿司を食べた後の胃にはかなり厳しい戦いかと思われたが、ぜんぶ平らげた。ふわふわなのでもたれない。しかし食べた後の私のお腹は明石焼きのようにまるく膨らんでいた。


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