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堺・『鰻や 竹うち』のうなぎ


うなぎの食べ歩きを細々と続けている。高価なので頻繁にというわけにはいかないが、忙しかった仕事がひと段落着いた後には、自分へのプレゼントとしてうなぎを食べていることが多い。


私は関西に住んで長いが、大阪風のうなぎと東京風のうなぎはどちらが好きかと聞かれると、本当に困る。どちらも好きだからだ。焼いた後に蒸さない直焼きのうなぎを『川上商店』(→『川上商店』についての過去の記事はこちら)という店で食べて、大阪風のうなぎの虜になったが、現在はさっぱりした東京風のうなぎの方がやや好きである。


今回書くのは、堺市にある『鰻や 竹うち』というお店。堺には、『う玄武』(→『う玄武』についての過去の記事はこちら)といううなぎ屋の有名店があるが、そちらと並んで、堺の2トップともいえる老舗のうなぎ屋だ。どちらも大阪風の直焼きうなぎを出す店である。


場所は、南海電鉄堺駅からすぐのところにある。コンクリート造りの近代的な建物だが、中はいたって庶民的。1階がテーブル席で2階が座敷。メニューに鍋物もあって、宴会も可能だ。


主要メニューの鰻丼は、「梅」が1,200円、「松」が1,600円、「特上・肝吸い付き」が3,300円。おいしいものを食べようと思った時に「迷ったら高い方」が鉄則かもしれないが、私はうなぎ屋に限っては、一番安いものは「寂しい」、一番高いものは「過剰」だという法則があるんじゃないかと思っている。だいたい、重箱や丼からはみ出るほどのうなぎなんて、良く言って「やりすぎ」、普通に表現して「大人げない」、悪く言って「悪趣味」。昔は沢山のうなぎも好きだったが、いまは重箱の中に美しく収まっていてこそだという感じがする。そこで真ん中の「松」を注文する。「寂しい」うなぎだったときに取り返しがつかないので、う巻きも注文する。



そして待つこと15分。鰻丼が運ばれてくる。ふたを開けた時にまず感じたのは、「少ない!」。一言、「残念なうなぎ」。たったふたきれ?まあ、1,600円だし、肝心なのは味だ。でも、いまどき、全国チェーンの和食レストランでももっと大きなうなぎを出すのに、これで大丈夫だろうか。ガッカリを通り越して心配になる。



しかしそんな第一印象が間違っていたことにすぐに気付く。炭火で焼いたといううなぎが香ばしく、かなりパンチ力のある力強さだった。それでいて中はふっくらと柔らかい。大阪風のうなぎのなかでも上位に入る「焼き」。そして、ご飯を食べていくと中にうなぎが1切れ挟まっていた。合計3切れ。値段を考えると、少なくなかった。これが、ご飯の熱で蒸す「まむし」。上に乗っているうなぎとはまた違った食感がある。家で食べた残りものの2日目のうなぎのようにリラックスしていて、溶けそうなくらいに柔らかい。恐るべし、大阪のうなぎ。


タレは江戸前とは対極的な甘みのあるタレで、ご飯にかかっているというよりは、炊き込みご飯のようにまんべんなくご飯と混じり合っている。すべての米がタレに絡んで茶色になる。味は濃厚で甘みがある。ご飯の間に挟まっているうなぎよりも、コッテリと濃いご飯に、私は驚いた。甘すぎるかなとも感じられるが、これはこれで素晴らしいバランスがとれた完成形の味で、大阪風のうなぎの底力を感じた。


東京風の鰻と大阪風のうなぎは思っている以上に違う。それを実感した、今回の訪問だった。例えば、外国人が東京でうなぎを食べた後、大阪の堺に来て『竹うち』の鰻を食べたら、同じ食べ物だと感じるだろうか。同じ魚が乗っているのには気づくだろうが、同じものかどうかは首をひねるような気がする。

『鰻や 竹うち』

大阪府堺市堺区市之町西3丁2番11号
定休日:月曜日(月1回、月・火又は日・月の連休有り)
11:00〜15:00/17:00〜20:00


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