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ダン・タイ・ソンの幻想即興曲/スケルツォ


ダン・タイ・ソンショパン・アルバムを聴いている。



1980年に、東洋人として初めてショパン国際ピアノコンクールに優勝したのは、中国人でも日本人でもインド人でもなく、ベトナム出身の若いピアニストだった。彼の名前はダン・タイ・ソンと言い、ベトナムハノイ出身だった。


この年のコンクールでは、衝撃的で奇抜な演奏を行ったイーヴォ・ポゴレリチの落選をめぐって、審査員の一人だったマルタ・アルゲリッチが抗議の辞任をするという事件があった。この事件が大きくクローズアップされ、ダン・タイ・ソンの優勝が霞んでしまった事実は否めない。しかしそんなことは抜きにして、コンクールでのダン・タイ・ソンは優勝に値する傑出したピアニストだった。


そして時は流れ、アルゲリッチダン・タイ・ソンがともに、2010年のショパンコンクールの審査委員を務め、東京での記者会見では並んで座っていたのだから、歴史は面白い。


ダン・タイ・ソンは、若い時にはいまのユンディ・リのように熱くダイナミックな演奏をしていたが、いまは随分落ち着いていて、オーソドックスなスタイルのピアニストだと言える。高度なテクニック、温かみのある音色、合理的な解釈に定評があって、ポゴレリチのような鬼才ではないかもしれないが、現代を代表するピアニストのうちのひとりである。体格は小柄だが、ピアニストとしては巨人であり、他には代えがたい存在で、なかなか現れないタイプの音楽家だと思う。見かけは大学教授のようであり、知的で教養もあって、クラシック音楽の発展について自覚的な音楽家である。


このアルバムでは4曲の即興曲と4曲のスケルツォを弾いている。一聴するだけでは驚くようなテクニックを感じないのだが、まるで晩年のルービンシュタインのような余裕が感じられる演奏である。パッと出のピアニストには真似できない含蓄と深みのあるピアノで、何度聴いても飽きない。


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