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アルベニスのピアノ協奏曲第1番


アルベニスは、スペインのカタルーニャ地方出身の作曲家である。クラシック音楽史上の知識としては、まず、ピアノ組曲『イベリア』を書いた作曲家として知られている。


今日は、『イベリア』ではなく、ピアノ協奏曲第1番について書いてみたい。


彼のピアノ協奏曲第1番はそれほどポピュラーな曲ではないが、1967年にオーケストラパートの楽譜が発見されて以降、『幻想的協奏曲』の呼び名でコアなクラシック音楽ファンに親しまれている。決して一大傑作でなく、よくいって佳作ではあるが、私にとっては、なくてはならない、他に代えがたい愛聴曲である。


その特徴は、酔った勢いで書いたラブレターのように気恥ずかしいくらいに甘く感傷的なメロディだ。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番に勝るとも劣らないほど、切なくて哀愁を帯びた作品である。そして全曲中に愛国心の叫びが溢れている。「大甘」ピアノ協奏曲の比較で言うと、ラフマニノフがロマンスで、フンメルのピアノ協奏曲第2番がメルヘンだとすれば、こちらはメロドラマのような世界観だ。私の妻がこの曲を聴いて「韓国ドラマの音楽みたい」と言っていたが、そんな曲である。


◇  ◇  ◇


冒頭。郵便物の再配達にやって来た配達人が「郵便物をなくしました」と告白するかのような悲劇的な始まりの後は、終始、涙がこぼれそうなほどの哀愁漂う旋律が待っている。スペインの人が、クラシック音楽の手法に基づきながら民族的感性で音楽を書いたらこうなった、というような作品。ピアノの独奏パートは聴きどころ満載で、こういう曲はピアノの達人にしか書けない。事実、アルベニスは超一流のピアニストだったと言われている。


第2楽章は水か高いところから低いところに流れるように自然で、穏やかな旋律が基調となる。しかし穏やかな流れは突如終わり、その先には激しさが待っていた。猛烈。激情。烈火のごとく燃え上がる。


第3楽章は、再び第1楽章の主題がよりドラマチックに再現される。単調に甘さと悲しさだけで引っ張ると思っていたら、予想を裏切って、スケールの大きな、幻想的で詩情豊かな旋律も登場する。抒情的な名曲だ。後半は、胸が張り裂けるような、涙をそそる旋律の連続でまったく聴き逃せない。


◇  ◇  ◇


以前に、フンメルのピアノ協奏曲2・3番5番について書いたが、この曲もそれに負けず劣らずの、「個人的大切」作品である。クラシック音楽にはそれほど知られていない曲なのに、素晴らしい作品がたくさんある。この曲もその一つで、こういう発見があるから、クラシック音楽ファンはやめられない。


CDは録音自体が少ない曲なので種類が少ないが、下に挙げる2枚があれば、十分だ。どちらも素晴らしい。


「剛」の演奏、「柔」の演奏、という雰囲気の2枚である。


Orchestral Music

Orchestral Music


こちらは「剛」。まるでチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を聴いているような、荘厳で厳めしい演奏。ピアノはイタリアのチッコリーニが弾いている。端正で凛々しい演奏である。指揮はエンリケ・バティス。立派な音楽作りだ。


Piano Concerto No. 1 (Concierto Fantastico), Op. 78: Allegro ma non troppo

Piano Concerto No. 1 (Concierto Fantastico), Op. 78: Allegro ma non troppo


もう一枚は、ポーランドの名ピアニスト、ブルメンタールによるもの。ナイーブで感受性に富んだ、繊細な演奏。壊れそうなほどにデリケートで、感性が鋭敏に研ぎ澄まされている。こちらが「柔」。CDが品切れになっていたので、私はiTunesからダウンロードしたが、amazonでもダウンロード販売を行っている。


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