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信州を旅する(1)


『信州を旅する』なんて、BSデジタルの特番で放送してそうな詩的なタイトルで始まったものの、2泊3日の平凡な旅行記です。


■私と長野県との関係


私の長野との関係は、義母が信州に家を建てたことに始まる。もう誰も住まなくなった、自分が生まれた家をいったん壊して、新しい家を建てて、日用品を揃えて、休みの時や時々使える別荘に仕立てたのが数年前。以来、義父母はちょくちょく通っているのだが、私の家族は共働きで休みが取れないことと、子供が小さいこともあって、訪れる機会も限られたものだった。子供ができる前に一度行ったことがあるだけだった。


それがこの夏、3日間休みが取れることになり、子供も2歳を越えて落ち着いてきたので、夏休みのための適当な目的地としてヒットしたのだった。


田舎の別荘というとおしゃれなイメージがするが、普段行かない分、換気が悪いところにはカビが生えるし、雑草は生えるし、大掃除は大変だし、懐中電灯に入っている乾電池の容量もやや減るし、田舎特有の虫にも悩まされるので、そんなにおしゃれなものでもないと思った。今度も、一歩足を踏み入れるとバッタが飛び交う昆虫の王国になっていた。現地での足として、レンタカーを借りたのだが、油断をすると虫がすぐにドアや窓の隙間から入ってくる。注意が必要だった。しかしいくら注意していても、いつ侵入したのか、後部座席の横にクモが一晩で蜘蛛の巣を張っていた。田舎暮らしは覚悟が必要である。


◇  ◇  ◇


信州の玄関口である松本までは、名古屋乗り換えで大阪から約3時間かかる。不便だ。しかし車だと5〜6時間かかるので、それは最初から選択肢になかった。


名古屋から松本までの『特急しなの』は山間を走るので、まるで船みたいに揺れる。だから陸にいるのに船酔いしてしまう。新幹線だったら2時間は長くないが、この電車の2時間は、「弱点を突いてくる比較的軽い尋問」か、「嫌な気がするお仕置き」に近い。けっこう辛い2時間だ。子供が1時間以上寝てくれたので命拾いをした。


■『吟醸そば もとき 開智店』


松本駅前でレンタカーを借りて、事前に調べていた蕎麦屋をナビで検索する。どうして蕎麦屋にしたかと言う理由は、第一に、私の子供は外出先ではうどんくらいしか食べないので、「蕎麦屋にはうどんがあるはず」という予想をしていたためだ。そばはアレルギーが怖いのでまだ食べさせていなかった。もう一つの理由は単純に、私がそばを食べたかったからだ。


しかしこの予想は間違っていた。冷静に考えると当然のことだが、「蕎麦屋にはうどんは置いていない」。本格的な蕎麦屋になるほど、メニューの数は少なくなり、うどんどころか、順に「丼」、「ご飯もの」、「天婦羅」もメニューから見られなくなっていく。そのうち、蕎麦屋には蕎麦すらなくなってしまうのではなかろうか。…それは冗談として、一流の蕎麦屋に行って「きつねうどん下さい!(笑顔で)」なんて言ったら、なんとも言えない空気になるはずだ。うっかりしていた。麺類という共通のものだが、そばと小麦には何の関係もない。うどんがある方がおかしいのだ。最近、『サガミ』などのチェーン店に慣れていて、両方あると思い込んでいた。店に入ってしまったことだし、結局、子供にはそばにかかっていた海苔だけ食べさせて、あとで車の中でパンを与えることにした(←子供のことを最優先に考えているようでいて、自分中心な人)。


選んだ店は『吟醸そば もとき 開智店』という、開智学校のすぐ近くにある店だ。特徴は、そばの実を30パーセントまで削って芯の部分だけを使うそばで、遠方から来るファンも多いらしい。たいへん有名な店だ。



見たときの第一印象は「きれい」。川魚の透明な皮膚のように透き通ったそば。透けて、ざるが見えそうだ。端正な美しさを腰に湛えたそばだ。


短いので、ズルズルとすすることはできない。コシよりは風味を味わわせるそばだ。そばがきを食べているような独特の感覚。そばの香りがすごい。じわ〜っと広がる。「香る」を「薫る」と書きたい。まわりの余計なところが全部削ぎ落とされて、これは「吟醸そば」としか名付けようがないぞ、と思った。そんな吟醸そばでは、そば湯は付録ではなく、メインとなる。これほど、上質で本格的なそばを堪能したのは初めてだった。


あと特徴を書いておくと、「高価」。1人前で1,300円だ。しかし一流のそば屋はだいたいこんなものなので決定的なことにはならない。店内は2階まであって広い。こういう店にしては駐車場が広い。7台くらい停められる。接客態度は課題多し。バイトの愛想よし。


北アルプス展望美術館(池田町立美術館)



目印の看板を頼りに山を登っていくと、突然、広大なスペースが現われる。この一帯は、あずみ野池田クラフトパークという施設で、北アルプス展望美術館を中心に、体験コーナー、レストランなどを備えた複合施設で、地方にしては大金を使って観光客向けに整備しましたという雰囲気がとても強い、やや複雑に感じる場所だが、そんなこととは無関係に、美しい自然の景色を満喫できてよかった。美術館では郷土の画家の常設展と意欲的な企画展を行っている。



この雄大な景色。遠くの山々は霞んでいるが、盆地に点在する民家が素朴でのどかである。こういう自然のあるところに住んだら、全く興味のない私でもガーデニングをするかもしれないと思った。この景色、日本でなく、アルプスみたいだ。昔、オーストリアインスブルックからイタリアに向かう列車に乗った時に、こんな景色を見た記憶がある。



「日本で最も美しい村」なんて初めて知った。看板も美しい。他はどこが加盟しているんだろう。家に帰ったら検索してみよう。


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