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ハイドンの交響曲を聴く


いつかハイドン交響曲について書こうと思っていたのだが、そこで気付いたのが、このブログでハイドンについて書くのは初めてだということだ。第一、「ハイドン」というカテゴリーもなくて、急遽作ったくらいである。


何しろハイドン交響曲は100曲を超えるので、なんとなく書かないままになっていた。


書かれた年代によって、「イギリス交響曲」、「パリ交響曲」、「ロンドン交響曲」などという括りでまとめられるが、ここでは詳しくは書かない(書けない)。


ハイドン交響曲群は、佳作の森であり、いくつかの傑作も隠されている。全盛期のイチローの打席に全くの凡打がなかったように、また、スタジオジブリ作品に完全な外れがないように(あった…『ゲド戦記』…)、それぞれに聴きどころのある作品を残している。


ハイドン交響曲のおもしろさは、一言で言うと、「一流の庭師が仕立てた箱庭的世界を楽しむ」ということだ。才能のある音楽家によって書かれた、当時としては斬新な管弦楽の技法の成果がそこにはあって、私たちは安心して、古典派交響曲の完結した世界を楽しむことができる。


「変な」標題を持つ交響曲もある。私は標題マニアなので、この表題だけで聴いてみたいと思うのだが、どうだろうか。


第6番ニ長調『朝』、第7番ハ長調『昼』、第8番ト長調『夕』。


薬を飲む時間みたいだ。


第55番変ホ長調『校長先生』。
第60番ハ長調『うっかり者』。
第82番ハ長調『熊』。


どんな曲なのか想像もつかない。『校長先生』は聴くモチベーションが起こらないのだが、なぜだろう。学校に良い思い出が少ないからだろうか。


第88番ト長調『V字』。


これは何となく想像がつく。楽譜の音符を眺めたら「V字」が浮かび上がる・・・と思ったら違った。単に整理番号が表題になってしまっただけ、というドラマのなさ。ただし、そんな事とは関係なく、曲はもちろん素晴らしい。


第101番ニ長調『時計』。


これは第2楽章の規則正しいリズムが、時計の振り子を連想させるから名付けられたと言われている。確かにそう思って聴いてみると、アンティークの時計みたいだ。


一聴すると地味で、それぞれの曲も似ているが、注意深く聴くと違うとわかる。この違いは、西洋人から見た日本人が見た目はよく似ているのに、中身や性格が驚くほど異なっているという違いによく似ている。ハイドンは、モーツァルトのような天才や、ベートーヴェンのような革命児ではないかもしれないが、一流の職業人である。均整のとれた骨格。凝ったオーケストレーション。斬新な発想。職人的に作り込まれた作品の数々。どれも、アイディアと機知とサービス精神に富んだプロの手腕によるものだ。


Haydn: The Complete Symphonies

Haydn: The Complete Symphonies


ハイドン交響曲について全部聴くいてみたいという人には、アンタル・ドラティ指揮フィルハーモニア・フンガリカによる全集が発売されている。ファンにとっては宝物となる全集だ。ハイドン交響曲全集として、世界初録音である。


最初から全集は重すぎるという人には、まずは第96番ニ長調『奇蹟』、第100番ト長調『軍隊』、第101番ニ長調『時計』あたりから聴いてみるのが良いと思う。


7 London Symphonies

7 London Symphonies


それらの曲の録音では、アバドがヨーロッパ室内管を振った録音がベストだ。まず、CDのジャケットのセンスにやられた。ロンドン交響曲集のセットということもあって、ロンドンの地下鉄のマークを使用したデザインである。クラシック音楽のCDは、ジャケットのセンスのなさにげんなりしてしまうこともあるが、これならロックやジャズのCDのジャケットのデザインにも負けない。


昔の録音はちょっと重厚すぎるし、オリジナル楽器のものは音が痩せていると敬遠する人にとって、アバドはその中間である。『時計』、『軍隊』はこの曲のベストの演奏だと思う。


オーケストラは小規模ではあり、演奏の精度が高く、音色には華がある。何より、指揮者の勢いがすごい。いまのように枯れたアバドは澄んだ諦観を感じさせ、マーラーの演奏などを聴くとそれはそれで神々しいのだが、この当時の録音が行われた80年代から90年代にかけては壮年期を迎えた頃であり、たいへんに精力的だった。まだまだ若々しく、颯爽とした音楽作りに充実した中身が伴っていて、ハイドンをやるのにふさわしい時期だったと思う。


ハイドン:交響曲96番「奇蹟」&100番「軍隊」&101番「時計」

ハイドン:交響曲96番「奇蹟」&100番「軍隊」&101番「時計」


名曲だけでいい、という人は、同じ音源から『奇蹟』、『軍隊』、『時計』だけ収録されたCDも発売されえているので、そちらもおすすめだ。


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