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エルガーの名曲・交響曲第1番変イ長調


エルガー交響曲第1番は、ブラームス交響曲のように重厚でありながら、シベリウス交響曲のように透明感がある。そしてワーグナーのオペラのようにドラマチックだ。


日本ではコンサートで頻繁に取り上げられるようなポピュラーな曲ではない。しかし、クラシック音楽ファンにはよく知られた名曲であるし、内容的には一流の交響曲であり、事実、イギリスでは絶大な知名度のある人気曲でもある。


エルガー交響曲を2曲完成させ、第2番の方も同レベルの素晴らしい作品だが、よりポピュラーなのは第1番の方だ。


エルガーの第1番を初めて聴いたとき、なんの説明や留保もなくただ「英国紳士のような曲」と感じた。育ちが良く上品で、クィーンズイングリッシュを話し、バーバリーが似合う。そして時に気まぐれ(想像力が貧しくてすみません)。優雅で高貴で多少、ユーモアもある曲。


第1楽章。イギリスのカントリーサイドのように、自然の美しさを連想させるメロディが溢れる。スケールの大きな主題が提示される。私はこの主題が大好きだ。行進曲『威風堂々』を連想させるようなメロディで、この主題が全体を支配している。


第2楽章。第1楽章から一転して、勇ましい音楽となる。各パートが忙しく動き回り、激しくなる。例えるなら、テレビゲームのロールプレイングゲームの戦闘シーンのような勇壮な音楽だが、実は第1楽章で提示された主題が背後で支配している。


第3楽章。穏やかで美しい名旋律。イギリスの湖水地方(行ったことはない)はこんな音楽が似合う土地なんだろうなと想像する。ピーター・ラビットが出てきそうだ。


第4楽章。第2楽章が再現されたかのような、せわしない音楽が支配するが、展開とともに落ち着きを見せ、最終的に主題に回帰する。フィナーレ近くでの主題の再登場は神々しさすら感じさせる。温かい気持ちで、むねがいっぱいになる。


曲の演奏時間は50分弱と、ブルックナーの後期交響曲のように長い曲ではないが、聴き終えた後、大河小説を読み終えたような充実感を味わう。凝縮された、壮大なストーリーがある。


録音の種類は多い。有名なところではジョン・バルビローリによる名盤【Elgar: Symphonies Nos. 1 & 2】があるし、比較的新しい録音も輸入盤を中心に発売されている。ロンドン交響楽団は指揮者を替え、この曲を何度も録音している。


■サー・コリン・デイヴィス×ロンドン響

Symphonies 1-3

Symphonies 1-3

サー・コリン・デイヴィスは、穏健な音楽作りかと思ったが、なんのなんの。ライブで燃えている。曲の旨味をしゃぶり尽くすような、執拗で老獪な音楽づくりが随所に発揮され、第4楽章で魂が爆発する。念のこもった演奏だ。お国もの。ドイツ人指揮者がベートーヴェンブラームスを振るような気持ちの入りようだ。


■サー・チャールズ・マッケラス×ロンドン響

エルガー:交響曲第1番、序曲「コケイン」

エルガー:交響曲第1番、序曲「コケイン」

線は細いがしっかりとした輪郭で描かれる英国的美景。丁寧で繊細な音楽作り。


ジェフリー・テイト×ロンドン響

Symphonies No 1 & 2

Symphonies No 1 & 2

中庸の極みみたいな演奏だが、丁寧な楽譜の読み、明晰な響き、演奏の迫真性のバランスがとても良い。おまけに録音の音質も良い。


■サー・ゲオルグショルティ×ロンドン・フィル

エルガー:交響曲第1番

エルガー:交響曲第1番

ドラマチックな演奏。カラヤンのようにスタイリッシュな音楽作り。圧倒的なスケール感に浸りたいのならこちら。


以上、4枚紹介したが、3枚がロンドン響で、もう1枚もロンドンのオーケストラなので、基本的なラインはよく似ている。イギリスのオーケストラは、全体的には実直で生真面目で硬質で、面白みには欠ける部分もあるかもしれないが、エルガー交響曲ではそんなスタイルがぴったりだ。


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