USHINABE SQUARE

クラシック名盤・名曲と消費 生活 趣味

当尾石仏の道を歩く・浄瑠璃寺〜岩船寺


先日、平日の休みを利用して、京都府南部にある当尾(とうの)の石仏の道を歩いた。


当尾石仏の道は、浄瑠璃寺から岩船寺までの約1.7キロメートルの山間の道である。その道の途中に、いくつか石仏があるのが最大のポイントだ。道もそれほど険しくないうえに、古道の中では距離も短いことから、年配の人も含めた歴史好きにとって、人気のハイキングコースである。


私は現地までは車で行って、浄瑠璃寺前の駐車場に車を停めた。浄瑠璃寺自体には駐車場がなく、近くに民間の駐車場がある。300円だった。


浄瑠璃寺からのコースはほぼ登りとなり、逆コースに比べると選択する人は少ない。多くの人は岩船寺までバスで行って、浄瑠璃寺まで歩き、浄瑠璃寺からバスに乗って帰る。私は車を浄瑠璃寺に置いたので、帰って来なければならない。


浄瑠璃寺



浄瑠璃」というと、中世に流行した、音楽と拍子付きの語り物や人形浄瑠璃を想像する。仏教用語でいう「浄瑠璃」とはそれとは少し違っていて、要するに「あの世?」「極楽?」なんて意味かなと思う。パンフレットに「寺名は薬師仏の浄土である浄瑠璃世界からつけられた」とある。私は浄瑠璃寺にはずっと行きたかった。辺鄙なところにある、極楽浄土を模した寺というイメージが何年も私を惹き付けていた。



浄瑠璃寺は、興福寺などの大寺と比べると、ずいぶんコンパクトなつくりではあるが、密度は濃い。中央の阿字池、本堂、三重塔を主要なモニュメントとして成る。三重塔には薬師仏が祀られている。薬師仏は、現生の救済を担う。そして池を経た彼岸には阿弥陀仏を祀る本堂がある。方角で行っても西側だ。西方は極楽浄土がある方角である。阿弥陀堂には阿弥陀仏阿弥陀仏は未来の救済を担う仏である。それが全部で9体あって、一同に並んだ姿は壮観という他ない。柱の間に1体ずつ座り、中央には巨大な阿弥陀如来。現生、未来。全部を救う。太っ腹。



ずっと行きたかったこともあって、浄瑠璃寺の門を入り、本堂を見、池越しに三重塔を見、本堂の阿弥陀仏に対面したとき、私はとても充実した気分になった。華美でなく、落ち着いているし、あの9体の阿弥陀仏の圧倒的な存在感にお腹いっぱいになった。これは見事なお寺だ。


■あ志び乃店


いったん、浄瑠璃寺の門をくぐった後、先に昼食にしようと考えなおした。見てからだと昼時で店が混雑してしまう。このあたりでは食べるところは限られていて、2〜3軒しかない。そのうちの一つ『あ志び乃店』は、浄瑠璃寺の門前にある。



山菜とろろそばを注文。メニューの多くは蕎麦やうどん、定食などで、凝ったものではないが、野山で採れた自然の食材を使用した料理が食べられる。放っておいても人がやって来る浄瑠璃寺に一番近い店なのに驕りはなく、落ち着いた雰囲気、料理のおいしさ、優秀である。高いレベルに唸った。


■石仏の道


浄瑠璃寺を名残惜しく後にし、石仏の道へ向かう。



浄瑠璃寺から歩いて一番近くにある石仏。通称、薮の中地蔵。



道はいよいよ本格的になってくる。こんな雰囲気の道をてくてく歩く。



途中、石仏を見落とさないように注意深く歩く。だいたいの案内標識はあるものの、それほど親切ではない。不安になる頃に次の見どころがやっと現われる感じ。



この笑い仏はとくに有名。石仏の道のスーパースターだ。それがが、浄瑠璃寺から歩くと中間点をだいぶ超えて出口が近づいてくるところにある。疲れた旅人を癒す笑顔。浄瑠璃寺の駐車場で買っておいたポカリスエットを開ける。山の匂いが心地よい。



坂道を歩いて50分あまり。岩船寺前までやっと着く。無人販売所がある。こんなふうに煎餅や漬物、大和野菜が売られている。のどかだ。岩船寺前にも民間の駐車場があって、こちらは200円という表示があった。


岩船寺


1.7キロメートルの道のりは、登りということもあって、その倍くらいの疲れを伴った。岩船寺に着いたとき、けっこう汗をかいていて、上着も脱いでいた。自動販売機で『アミノバリュー』の高価な方を買って一気に飲む。いくぶん、疲れがとれた気がした。



本尊は弥陀如来坐像。平安時代行基作と伝えられていて、腰の据わった、落ち着きのある像だった。それを鎌倉時代作の四天王立像が守る。そのほかいくるかの重要文化財が眠る。



でも私が参ったのは、美しい境内の様子だ。季節は新緑。緑の溢れる自然の生命力と古いお寺の佇まいが見事に調和し、最高の風景を作り出している。紅葉の季節はそれは素晴らしいだろうが、新緑の季節も負けてはいない。というより私は緑の季節の方が好きだ。不便なところだが、ここまで来てよかった。



岩船寺』は、花の寺としても有名。


■帰りの道で出会った石仏たち



帰りは行きのコースからは見られなかった石仏も押さえておく。この石仏はわざわざ下に降りて行かないと見ることができない。急な階段を下りていくと、マンションのエレベーターの中くらいのスペースがあって、脇に巨大な石があって、そこに彫られていてる。一願不動。鎌倉時代の作。何か一つだけ願い事をかなえてくれる仏さまらしい。



三体地蔵。ここもわざわざ行かないと拝むことができない。岩船寺の方から行くと山道が通行止めになっているので、大回りして行く。本物の山道を歩かされる。それでも5分くらいの距離にあるのが救い。



こんな山道。天狗が住んでいそうな山だ。天狗よりも猪がいそうで怖い。動物的カンを働かせ、少々緊張して歩いて、もとの道に帰ってきた。


これで、見たい石仏のあるコースを全部まわり終えた。登りだった往路に比べ復路は下りが中心なので楽だった。無事に車に着いた。帰りは早かった。雨も降りそうで降らなかった。傘を持ってこなかったことを後悔した曇天の時間帯もあったのだが、一滴も降らなかった。道々で仏さまが見守ってくれていたのだろうか。


人気ブログランキングへ
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 クラシックブログへにほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へにほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ