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ノリントン/交響曲第31番ニ長調『パリ』


ロジャー・ノリントンによるモーツァルト交響曲選集の中から、第31番ニ長調『パリ』を聴いている。


モーツァルト交響曲は、初めて聴いたのが中学生の時で、そのときに好きになったのが、「ト短調交響曲」と呼ばれる第40番だった。その後、第41番『ジュピター』のレコードを買ってもらい、これもかなり聴いた。指揮者はワルターだった。そして高校、大学ではクラシック音楽から疎遠な生活を過ごした。社会人になってだいぶ経ってから、再びクラシック音楽を聴き出して、今度は第38番『プラハ』に夢中になった。『プラハ』の美しさを教えてくれたのもワルターだった。この美しすぎる名曲『プラハ』を聴いたがために、「生きているうちに一度はチェコプラハに行かねばならない」とまで勝手に心の中に決めた。その夢はしばらく経ってから実現した。


そのあと、小ト短調と呼ばれる第25番、第29番、第33番も、相当に聴いた。現在は第29番と第33番にはやや飽きている。第39番も人並みには聴いた。名曲。その後、第36番『リンツ』を気に入り、しばらく私のベストのモーツァルト交響曲に位置していた。


最近になって特に気に入っているのは第31番『パリ』だ。


現在の耳で聴くと曲調はパリらしいとは特に感じないが、当時のフランス趣味を織り込んで、聴衆に大ウケした曲だと言われている。新たにクラリネットを2管使用するなど、高い表現意欲を持った作品としても知られている。


第1楽章は後半で軽やかにステップを踏むような展開が聴きどころだし、最終楽章で見せる大胆な転調もモーツァルトらしい。この転調は大変見事だ。モーツァルトの天才を確信するフレーズは他の曲にもたくさんあるが、この曲の最終楽章で見せる転調の鮮やかさは、天才の証明として最良のものかもしれない。ドキドキする。何度も繰り返し聴いている。



ノリントンシュトゥットガルト放送響による演奏は、小ぶりな編成でノンビブラート奏法であるために、軽量級の演奏に思われるが、そんなことはなくて、豪放磊落と言ってもよいほどのスケール感だ。確かに音の分厚さはそれほどでもない。しかし中身が詰まっている。オーケストラの全員が「今夜、初めて、私たちが本当のモーツァルトを聴かせるのだ」という高揚したメンタルで臨んでいる姿が思い浮かぶ。そして指揮者がそれに輪をかけて野心的でないとこういう音は出せない。刺激的で、潔く、力強い。このCDはライブ録音で他の曲も収録されているのだが、拍手はこの曲が終わった時が一番多い。この日一番の出来という感じだ。


ずいぶん前から知っている曲だが、最近、この曲との距離が縮まってきた。


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